日本漢文の世界

 

月ヶ瀬梅渓(月瀬記勝)







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 一目(ひとめ)千本(せんぼん)は、尾山(おやま)八谷(やたに)(いち)(なり)(はな)(もつと)(おほ)し。(ゆゑ)()()()り。(けだ)芳野(よしの)櫻谷(さくらだに)()すと()ふ。()同人(どうじん)(ゐん)()でて、前崖(ぜんがい)(くだ)る。山水(さんすい)梅花(ばいくわ)(みな)(すで)佳絶(かぜつ)なるを(おぼ)ゆ。()(まか)せて()き、一大谷(いちだいこく)(いた)る。文稼(ぶんか)()りて(これ)()ふ。(けい)詰曲(きつきよく)して(のぼ)れば、(はな)(これ)(さしはさ)む。()して()(かん)()づ。白雲(はくうん)()みて()くが(ごと)し。數百歩(すうひやくほ)にして(いただき)(たつ)す。下顧(かこ)すれば、彌望(びばう)皜然(かうぜん)谿山(けいざん)(あひ)輝映(きえい)す。
 ()(かつ)芳野(よしの)(あそ)び、()一目(ひとめ)千本(せんぼん)()る。()(せい)()りて、()(しよう)()し。(また)(かつ)嵐山(あらしやま)櫻花(あうくわ)()る。()(しよう)()りて、()(せい)()(なり)
 (さら)(これ)西土(せいど)梅花(ばいくわ)(もつ)()ある(もの)(もと)むれば、(かう)孤山(こざん)は、(きやう)(けだ)(いう)なれども、(はな)(すなは)寥寥(れうれう)たり。()鄧尉(とうゐ)は、(はな)(すこぶ)(おほ)けれども、()(すなは)熱鬧(ねつだう)なり。(ただ)羅浮(らふ)梅花村(ばいくわそん)のみは、峻峰(しゆんぽう)(たい)し、寒溪(かんけい)(のぞ)みて、(はな)(もつと)(おほ)し。()梅溪(ばいけい)()()きに庶幾(ちか)からん()
 ()(すで)斂昏(れんこん)(はな)淡煙(たんえん)(なか)(かく)れ、千樹(せんじゆ)依約(いやく)として()(きは)まる(ところ)()ず。暗香(あんかう)蓊葧(をうぼつ)として(ひと)(おそ)溪聲(けいせい)(ますます)(ちか)くして()(だい)なるを()く。咫尺(しせき)(いろ)(べん)ぜざるに(いた)りて(のち)()る。


2019年5月2日公開。

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