日本漢文の世界

 

月ヶ瀬梅渓(月瀬記勝)







()(きう)

 (たの)しき(かな)梅溪(ばいけい)(いう)()兩日(りやうじつ)留連(りうれん)し、良友(りやういう)佳朋(かほう)(したが)ひて、天下(てんか)無雙(むさう)(しよう)()る。(てん)(また)()雪月(せつぐゑつ)()(をし)まず、(あは)せて(これ)(たま)ひて(もつ)三絶(さんぜつ)()す。多幸(たかう)()はざる()けん()日夕(につせき)(ゐん)()し、(まさ)上野(うへの)(いた)らんとす。()(くろ)し。(まよ)ひて(みち)(うしな)ひ、荊棘(けいきよく)(ちう)(おちい)り、進退(しんたい)()(きは)まる。(すなは)()んで渠水(きよすい)()え、(でん)(わた)ること數町(すうちやう)(わづか)官路(くわんろ)()同人(どうじん)(こもごも)文稼(ぶんか)(とが)む。()(いは)く、「(また)()ならず()今日(こんにち)(いう)()ならざる(もの)()し。()()餘波(よは)(のみ)」と。公圖(こうと)(わら)つて(いは)く、「(かく)(ごと)きは蛇足(だそく)(のみ)」と。(しう)哄然(こうぜん)たり。初更(しよかう)上野(うへの)客舍(かくしや)(たつ)す。翌日(よくじつ)()公圖(こうと)文稼(ぶんか)(とう)(わか)る。子達(したつ)(とう)(たずさ)へて()る。
 ()(かう)()七言律詩(しちごんりつし)十首(じふしゆ)()たり。奚囊(けいなう)(みた)し、公圖(こうと)贈篇(ぞうへん)(およ)公圖(こうと)半香(はんかう)(とう)(つく)(ところ)()(もし)くは(ぐわ)と、稛載(こんさい)して(かへ)る。(これ)壁間(へきかん)()り、(また)(かめ)院主(ゐんしゆ)(おく)(ところ)梅花(ばいくわ)()す。几案(きあん)(かたはら)()り。清香(せいかう)(しつ)滿()つ。數日(すうじつ)恍然(くわうぜん)として、()梅溪(ばいけい)(ちう)()るがごとし。(ここ)(おい)()つて(これ)(しる)し、九篇(きうへん)()たり。子達(したつ)をして()(つく)り、各篇(かくへん)(ひだり)()きて、(もつ)(いま)(あそ)ばざる(もの)(しめ)さしむ。(また)()(けい)(ますます)(あら)はれんことを(ほつ)する(なり)


2019年5月2日公開。

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