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月ヶ瀬梅渓(月瀬記勝)








梅谿遊記七現代語訳

 嵩村まで帰ってきて、舟を乗り捨てて上陸した。緑の竹林が川沿いに数百メートル続いているのも、梅渓には欠かせない風景である。嵩の西のふもとは梅花も多く、月ノ瀬村の花と連なり、爛漫たるさまは銀海のようである。西に数百メートル行くと、花の間に坂があり、らせん状の坂を上って行くと、まさに月ノ瀬村に達する。山の中腹に雪の中から大きな岩が顔を出している。コケ生して、あおあおとした様はまことに愛すべきものである。ここで座って少し休んでから、さらに頂上まで登った。視界が開けて、渓流や山の様子が隠すことなく手に取るようにわかる。梅の花は山からあふれ谷を満たし、見渡す限り真っ白である。譬えていえば、泰山の頂上に登って大地を見下ろせばはみな白雲であるようなものだ。こうして梅渓全体の真の姿を知り得るのである。月ノ瀬が(月ヶ瀬十村の)名声を独占しているのもうなずける。月ノ瀬という地名が優雅であるとの理由だけではないのだ。
 偶然にも天はまた曇り、雪はまた激しく降り始める。そこに風が吹きつけると、まるでひらひらと舞う蝶が空に満つるかのように見えるのも奇観である。それから川を下り、渡し舟に乗って帰った。


2019年5月2日公開。

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