日本漢文の世界

 

月ヶ瀬梅渓(月瀬記勝)








梅谿遊記四現代語訳

 梅と月の観賞は終わり、引き返して宿へ帰る。夜は更けてすでに三更(午前0時頃)を過ぎている。ひどく疲れた。すこし眠ると、明け方である。目が覚めると寒さが骨に沁み、障子が白く光っている。起きて戸を開けると、雪が平地に三四寸(10センチ程度)積もっているのが見えた。「奇異なことよ」と口々に言い合いながら、また酒を出させ、なみなみとついでは飲み干した。同好の友らと外出して、また真福寺へ赴き、昨夜月を観賞した場所へ来ると、川も山も昨夜と全く変わらないが、赤い崖、青い岩はひとつのこらず白い宝石のかたまりと化し、梅花に白い色が映りはえる。美青年が顔に白粉をつけたように、美しさが倍増している。下を見ても上を見上げても、目に入るものは雪の白さだけである。その中で川の色ばかりがいっそう青く、うす青色の宝石のようである。梅渓の清浄さは、この雪景色に極まっている。
 昔の人は梅を論じて、「白さは雪に三分負けている」と言った。たしかに雪は白さで梅に勝るが、梅はつややかさで雪に勝る。それぞれ高雅な趣きがある。韓愈は雪と梅を論じて「雪の光彩と梅の艶美とは、たがいに関係がない」と言ったものだが、まさに定論というべきである。
 このたびの旅行では、すでに花と月の奇観を見たが、今はまた雪と梅の清らかさも併せ見ることができた。天のめぐみはこの上もない。さらに前に先へと進んで景色を見たいと思ったが、雪で歩行困難なのでよしておいた。


2019年5月2日公開。

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