日本漢文の世界

 

月ヶ瀬梅渓(月瀬記勝)








梅谿遊記四語釈

三更(さんかう)

午前0時頃。午後7時頃から翌朝の午前5時頃までの10時間を2時間ごとに5等分し、初更•二更•三更•四更•五更のように数えたもの。

奇寒(きかん)

(春には)珍しい寒さ。

紙牕(しさう)

障子のこと。

滿引(まんいん)

なみなみと酒をついで飲み干すこと。

丹崖(たんがい)

赤い色の崖。

碧巖(へきがん)

青い色の岩。

白玉堆(はくぎよくたい)

白い宝石のかたまり

素彩(そさい)

白い光彩。白い色。

粉傅何郎(ふんぷからう)

 「粉傅何郎」は「傅粉何郎(ふぷんかろう)」ともいう。雪梅を「傅粉何郎」と形容することは、唐の宋広平の『梅花賦』に「若し夫れ瓊英雪を綴り、絳萼霜を著(つ)け、儼(げん)たること傅粉の如し、是れ何郎と謂ふ(玉のような花に雪が積もり、赤い萼(うてな)に霜が降りて、化粧しているようだから、『何郎』というのだ)」とあるのに基づく。
 三国時代、魏の何晏(かあん)が白粉を付けて化粧していたことから、色白の美青年を傅粉何郎」というようになった。略して「何郎」ともいう。
 何晏(190?~249)は、魏の曹操の養子で、清談を流行させた人物である。現存最古の『論語』注釈書である『論語集解』の編者としても知られる。曹丕に憎まれ、長らく閑職にあったが、曹丕・曹叡の死後、大将軍・曹爽に気に入られて吏部尚書となった。しかし、曹爽の政敵・司馬懿がクーデターを起こした際に曹爽と共に殺された。ちなみに小説『三国演義』では、第一百六回にこの事件が描かれている。

一俯(いつぷ)一仰(いちぎやう)

俯(うつむ)いたり、あおむいたりすること。下を見ても、上を見ても、という意。

皚然(がいぜん)

雪や霜の真っ白な様子。

縹玉(へうぎよく)

はなだ色(うすい青色)の宝石。

古人(こじん)

ここでは宋の盧梅坡のこと。

三分(さんぶ)の白(はく)

盧梅坡の『雪梅』詩の語。梅は雪に対して白さは三分負けているが、雪のほうは梅に対して香のよさが負けているということ。

佳趣(かしゆ)

高雅な情趣。

韓退之(かんたいし)

唐の韓愈。

彩艷(さいえん)(あひ)()らず

この語は韓愈の七言律詩『春雪間早梅』の中にある。雪の光彩と梅の艶美とは、たがいに関係がないということ。

定論(ていろん)

正しいものと確定した原則。

前路(ぜんろ)

これから行こうとしている道。前方の道。

歩履(ほり)

歩くこと。


2019年5月2日公開。

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