日本漢文の世界

 

漢訳不如帰







漢譯不如歸 上篇 (一)の二(1)

[原文] 民友社版3頁; 岩波文庫(新版)8頁
 「御孃(おじよう)――おや如何(どう)(いた)しませう、また(くち)(すべ)つて、おほほほほ。あの、奧樣(おくさま)唯今(ただいま)(かへ)りまして(ござ)います。おや、眞闇(まつくら)奧樣(おくさま)エ、何處(どこ)御出(おいで)(あそ)ばすので(ござ)います?」
 「ほほほほ、此處(ここ)()るよ」
 「おや、ま、其處(そちら)に。(はや)御入(おはい)(あそ)ばせ。御風邪(おかぜ)()しますよ。旦那樣(だんなさま)はまだ御歸(おかへ)(あそ)ばしませんで(ござ)いますか?」
 「如何(どう)(あそ)ばしたんだらうね?」と障子(しやうじ)()けて(うち)()りながら「(なん)なら帳塲(した)其樣(さう)()つて、御迎人(おむかひ)をね」


御孃・・・女主人は結婚したので「奥様」と呼ぶべきだが、いままでの習慣で「御嬢様」と呼びそうになり、あわてて言い直した。



2009年10月4日公開。

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