日本漢文の世界

 

漢訳不如帰







漢譯不如歸 上篇 (一)の二(1)

[訓読]
 一(いち)老媼(らうあう)有(あ)り。徐(おもむろ)に呼(よ)びて曰(いは)く、「阿孃(おぢやう)否(いな)恭人(おくさん)。何(いづ)れの處(ところ)に在(あ)る乎(や)」と。曰(いは)く、「此(ここ)に在(あ)り」と。媼(おうな)笑(わら)うて曰(いは)く、「媼(おうな)恭人(おくさん)に對(たい)して依然(いぜん)舊稱(きうしよう)を捨(す)てず。耄耋(ぼうてつ)知(し)る可(べ)し」と。且(か)つ曰(いは)く、「郎君(らうくん)歸(かへ)り來(きた)る頗(すこぶ)る遲(おそ)し」と。曰(いは)く、「妾(せふ)も亦(ま)た之(これ)を憂(うれ)へ、茫然(ばうぜん)として室(しつ)に歸(かへ)るを忘(わす)る」と。

老媼・・・おばあさん。
阿孃・・・「おじょうさま」。「阿」は、日本語の「お」の訳語として使用されることがある。しかし、中国での用語法では、「阿孃」とは母親のこと。
恭人・・・高位の人の妻。ここでは「おくさん」の訳語として用いられている。
耄耋・・・おいぼれ。「耄」とは90歳、「耋」とは70歳のことをいう。
郎君・・・だんなさま。
妾・・・・女子の自称。
茫然・・・がっかりして、うつろな気持ち。


2009年10月4日公開。

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