日本漢文の世界

 

赤目四十八滝(観瀑図誌)








岩窟瀑現代語訳

観瀑図誌(原泉混注) 日本漢文の世界 kambun.jp
源泉から絶え間なく水が注いでいる。
呉策書く

観瀑図誌(岩窟瀑の画) 日本漢文の世界 kambun.jp
海崖

観瀑図誌(岩窟瀑の詩) 日本漢文の世界 kambun.jp
岩窟は滝を吹きだしている。
その高さは2丈強(7メートルほど)
滝の源はどこにあるのか知らない
高い木がうっそうと茂っている。
旭荘主人謙

 そこから数町(数百メートル)行くと、左側の崖は、雲に届くほど聳えており、頂上には松の大木が生え、山腹にはもみじなどの草木が生えている。

赤目四十八滝(岩窟滝へ至る道) 日本漢文の世界 kambun.jp
岩窟滝へ至る道

 ここを過ぎれば岩窟滝である。岩窟滝は、滝の右側に岩窟があるので、この名が付いている。高さは2丈ばかり(6メートルほど)である。初めはまっすぐな白い流れだが、なかほどで水が飛び散り、入り混じって乱射し、ざあざあと音を立てており、まことに愛すべき滝である。滝壺は浅く澄んでいる。滝の前にある河原には六、七人坐ることができよう。四十八滝の勝景は、この滝がいちばん奥の最終である。ほかの滝は深い滝壺があるのでなければ、険しい岩があり、すばらしい眺めではあるが、人の心をのんびりさせるには至らない。しかしこの滝まで来れば険しい道のりも終わり、滝壺の水を汲むこともできる。

赤目四十八滝(岩窟滝) 日本漢文の世界 kambun.jp
岩窟滝

 だから、ひょうたんの酒を傾けて疲れをいやすのにちょうどよい。この滝は、いわば勝景の始まりであり、遊覧の終わりでもある。自然の造形による配置の妙に感心するばかりである。

赤目四十八滝(岩窟滝前の河原) 日本漢文の世界 kambun.jp
岩窟滝前の河原

赤目四十八滝(岩窟滝前の河原) 日本漢文の世界 kambun.jp
岩窟滝前の河原

 岩窟はやや深く広く、林の中にある。その前にある谷川のように見えるが石が多く水がないところを「逆川(さかさがわ)」と呼んでいる。大雨が降って水があふれだす日には、川幅が狭すぎて水の行き場がなくなり、水は旋回して、逆川を通って林のまわりをめぐり、出合(であい=地名)の下流へと溢れて行き、逆流しているかのような勢いがあるという。

赤目四十八滝(岩窟滝横の岩窟) 日本漢文の世界 kambun.jp
岩窟滝横の岩窟

 この場所よりも上流では、谷川はだんだん細くなり、水もだんだん少なくなってくる。水源は、ほど近いところにあるのであろう。

赤目四十八滝(岩窟滝) 日本漢文の世界 kambun.jp
岩窟滝

 そもそも高さがあったり、見た目の珍しかったりする滝は、世間に多く存在しているが、だいたいが一か所に五、六の滝が集まっているに過ぎない。しかし赤目は、滝の多さもさることながら、滝壺や土地の美しさを兼ね備えており、希有な存在といえよう。これが、私が記録を作って、後から来る人びとを導こうする理由である。

拙堂先生の評
前記 素晴らしい風景が目に浮かぶような非凡な筆さばきで、人も神も滝の下へ連れて行かれてしまう。
後記 前記の記録する滝の様子でさえ非凡であるが、それでもそれらの滝を知っている人はいる。後記に至っては、記載された内容は、いままで文字に表されたと聞いたことのないものだ。前記も後記もこれまで誰も書き得なかったものだが、後記の文章はさらにまた非凡である。その場所がこれ以上ないほど素晴らしいのだと分かる。

観瀑図誌(落合雙石の評詩) 日本漢文の世界 kambun.jp
『観瀑図誌』を読む
山は飛び、水は立ち騒いで、すばらしい風景を競っている。
千年ひそかに隠されて世に知る人はいない。
椽筆、健筆をふるって誰も書けなかったことを初めて書く。
名声はたちまち四方に広がって騒がしい。
 七十九歳の雙石(そうせき)・落合賡(おちあい・こう)


2017年3月26日公開。

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