琵琶瀑
千丈の珠簾
六十四翁 呉策書
海崖
琵琶瀑
諸瀑は紆餘多し
斯の境のみ獨り直下す
混混たり數千尋
亦銀河の瀉ぐに似たり
旭莊
東澗に沿ひて行けば、澗底甃の若し。而して逐次蹙褶す。大なるは階級の若く、細きは襞襀の若き者半町許り。水其の上を行く。一たびは舒やかに一たびは疾く、極めて致き有り。
又闇潭なる者有り。上に亦流れを懸ること數尺。凡そ潭の名を得たる者、諸澗多く之有り。其の掲げて左右に涉る者も、亦指を僂むるに遑あらず。
進んで琵琶瀑を得たり。諸瀑は奔激するに非ずんば則ち緩注す。此れ獨り淙然として直下す。瓴を建へすの勢有り。幅は曳布よりも濶し。長さは幾んど不動に抗す。但不動は奮迅畏る可く、地も亦絕幽なり。此は則ち清爽愛す可し。境は差豁開にして、狀景異なりと雖も、其の偉觀爲るや則ち同じき也。澗奧に在るを以て、此れ獨り寂乎として聞ゆる無し。瀑布も亦幸不幸有る耶。
潭は狹くして長し。色は濃墨の如し。四涯皆全石にして、忽ち陷ること井の如し。蓋し龍が壺の大なる者なり。石を縄に繋ぎて試みに之を投ずるに、下ること四丈有餘。舌を吐かざる者無し。右崖の石壁は潭中に起り、嶄立すること數仞。頑青老碧にして、鱗皴殊に奇なり。
瀑を背にして其の左崖を攀ること百步可り。既にして澗滣に降る。
2017年3月26日公開。