二頭の竜が岩の上にうずくまっている。
青谷老人
荷担滝
上の滝壺と下の滝壺
波しぶきは散乱しまた集まる
分かれた流れは岩の肩を覆う。
まるで人が荷物を担いでいるようだ。
旭荘
散らばる岩石を踏みしめて数町(数百メートル)ほど行くと、巨大な岩が谷川の中にある。その岩の上には木が生えており、別の珍しい岩に乗っかっている。まるで僧が座禅しているようである。
荷担滝下流の大岩
斜滝の向こう側に巨大な岩があります
そこから更に数町(数百メートル)行くと、右側にそそり立っている大きな岩がある。表面が数回折れて襞になっており、長さは十丈(三十メートル)あまりある。高さは七八丈(20メートルほど)だ。岩の根元は地面から1尺(30センチ)ほど出ており、小石で埋もれているので、石の土台の上に作った垣根のように見える。ところどころ小石がないところもあり、岩の足の甲が見える。岩の胸や腹にあたる部分より下は、二三段へこんでおり、まるで斧で切り取ったようにばっさりと切り取られている。さきほどもこのような岩を見たが、少し小さなものだった。私は郡内の青蓮峡(香落渓)をしばしば歩いている。青蓮峡は谷全体が岩のようなものだが、このような岩は一つもない。鬼が斧の切れ味を楽しんで作ったのであろうか。
荷担滝下流の大岩
美しい柱状節理です
荷担滝はその上流にある。しかし、流れに沿って行くことはできない。左側へ渡り、崖をまっすぐ百歩(百数十メートル)ほど攀じ登る。あげた膝があごにくっつくほど急な崖だ。半分ほど登ったところで、右へ曲がって降りる。すると二つの滝が咆哮しているのが聞こえ、滝壺が足元に見える。思わず足がすくむ。
荷担滝
来る道は木がうっそうと茂っており、棘を肩に受けながら草むらを踏んで行くので、登りも下りもたいへんな苦労である。やっとのことで降りると、滝の右脇へ出てきた。そこで喜びの表情を浮かべるというのが事の顛末である。
荷担滝
上下の滝
滝は上も下も滝壺になっており、石の崖が境界になっている。その崖は谷川を横断しており、横の長さは6、7丈(20メートル)ほどであり、高さは3メートルほどである。滝壺の上にはそれぞれ滝がある。崖の中央は盛り上がっていて駱駝の背のようになっており、左右はくぼんで溝のようになっている。
荷担滝
上の滝壺
上の滝壺の水が、崖の左右に分かれてあふれ出て、下の滝になっている。左側の崖は、肩の部分が縮み、腰の部分が膨れている。水の勢いは、集まったり、散らばったりしており、千手滝と霊蛇滝の中間くらいである。右側の崖は、壁のような岩が三段に重なって聳えている。水は蹴り出すかのように、躍り出すかのように流れ、二つの滝が奇を競っている様子は、二頭の白竜が戦おうとして互いに首をめぐらしているようだ。
荷担滝
上の滝
上側の滝は岩に沿って、くねくねと曲がっている。そして岩の腰のあたりまでくると、滝は横に伸びてちょろちょろとしたたり落ちる。滝とは別に細い変わった流れがあり、岩の周りをめぐって滝壺に合流している。仲たがいした者たちが仲直りするようなものだ。そしてまた流れは二つに分かれる。
荷担滝
上の滝を上から見る
上下の滝をあわせ見れば、二つの流れが二層になっている。一つは急流で一つは緩やかな流れであるというのも珍しい。崖の岩が上下の滝壺を隔て遠ざけると同時に、一方では左右の滝を挟み込んでいるので、荷物を背負っている人のように見える。だから荷担滝と名付けられている。
荷担滝
上の滝壺のほうが、下の滝壺より深く、長方形である。右側の崖には桜の老木があり、滝壺の上を4丈(12メートル)にわたって覆っている。花の時期にはどんなにか綺麗だろう。滝だけでも素晴らしいのに、桜まで添えるとは、天はここに優れた物を集めようとししているのだろうか。
荷担滝
右の崖から水を踏んで左側へと渡る。幅は4尺(1.2メートル)にも満たない。中ほどの隆起したところを越えて、また水を踏んで2、3歩(2、3メートル)ほどを渡るのだが、こちらも幅は6、7尺(2メートル)しかない。この二か所は、絶対に滑り落ちてはならない。もし滑ったら、上の滝壺に沈まなかったとしても、下の滝壺に沈むであろう。ここが滝川のもっとも危険な場所である。
荷担滝
上の滝の上流部分
ここを渡ったのでしょうか
ここを渡り終わって数十歩(数十メートル)行くと、南側の小川が合流しているところがある。その合流点を「落合」と呼んでいる。南側の小川にも小さな滝があるという。右側の山は茅の花で覆われ、風が吹くと山が揺らぐように見える。山頂には奇石が並んで、それぞれ顔を人に向け、振り向くのを待っているかのようである。
落合
落合の上流にある夫婦滝
2017年3月26日公開。
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