古い藤の間から月が見える
北渚・呉策
(宮内)海崖
縋り藤の淵
岩と淵とが険しさを争い
見物の客は肝を消すような思い
道がないところまで来たならば
藤に縋りついてやっと見ることができる
旭荘
前澗の滝を一めぐりしてから、龍が壺を過ぎて1町(約109メートル)ほど行くと、斧が渕という淵がある。斧が渕は両側がすっかり石の壁になっているので、通ることができない。左側に通り道を探してみると、崩れた崖の間に、やっと通れるくらいの道があった。しかし、石がごろごろしており、足で踏めば転がってほかの石とぶつかり合い、躍るように淵の水に落ちてゆく。ちょっと躓いたら、もう立て直すことはできず、淵におちるしかあるまい。それに、つかまることのできる草木がまったくない。だから、まず両手で地面を押さえ、足で崩れない所を探り、やっとのことで登ってゆく。前の人が石を転がせば、後から行く人に必ず当たってしまう。そして、登りきったら、今度は降りて行かなければならないのだが、その道がまた恐ろしく険しい。垂直な崖が谷の上に切り立っており、その前に1丈(約3メートル)ほど土の道が無くなっているところがある。そこだけは歩けるところがない。三本の小さな丸太で橋が作ってあるが、よく見れば半分は朽ちており、半分はキノコに覆われている。普通に渡れば、橋が落ちてしまいそうだ。そこで、木の枝に縋りついて、注意深く橋を踏み、崖に肩が擦れながら、やっとのことで降りた。
斧淵(おのがぶち)
斧淵の上の険しい岩道
そこから谷沿いに1町あまり行ったところに、一つの珍しい流れがある。30歩から40歩(約40~50メートル)ほどの間、一枚岩が底になったところで、くねくねと曲がりながら下っている流れだ。水は、躍り、突きあがり、曲がってまっすぐになり、三回折れ曲がって滝壺に落ちる。落ちたところに石があり、水は弾かれてうずまき、勢いがそがれてから流れて行く。独特な見ごたえがあるのだが、残念ながら滝には名前がない。滝壺のほうは「縋り藤」と呼ばれているので、その名を借りて、この滝を称揚しておきたい。
縋り藤(すがりふじ)の渕と小滝
縋り藤(すがりふじ)の小滝
2017年3月26日公開。
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