龍が壺
車輪流轉
吳策書
青谷老人
古木陰陰として合し
廻風颯颯として鳴る
蟄龍が眠り覺めんと欲す
緑潭に近づき行くこと莫れ
旭莊廣瀨謙
蹊を其の左肩に取る。亦危險を極む。陟り降ること町許り。其の間俯して曳布を窺ひ、益其の長きに驚く。艱辛して僅かに通じ、一潭を見る。[囗淵][氵粦]として墨を攪す。即ち龍が壺と爲す。
蓋し數十步の間、全石地と爲り、坦坦然たり。坎有り懸流を受く。潭は是れ已。徑は丈許り。形は圓にして壺に類す。但し懸流は觀るに足らず。故に潭名を得たり。相傳へて以て底無しと爲す。語に云く、「岱霤石を鑿つ」、と。豈に水石の錐と爲り、此の深潭を造れる歟。
嘗て村老に聞くに云く、「大旱雨を望む毎に、土人相聚りて、礫を此に亂投すれば、則ち必ず風雨大に作る。木を拔き稼を傷ひて、利は害を償はず。故を以て郡府禁有り。」、と。此れ峨山の雷洞に雨を禱ると、其の事相類す。奇と謂はざる可けん乎。
此を過ぎて已に往けば、泉源渾浩として、猶ほ觀る可き者多し。而して山は險にして步は艱し。世の游ぶ者此に止る。故に余の前游も、亦此を以て限りと爲せり。丗年の久しきを經て、始めて能く其の源を究む。游に前後有り。同人遂に前澗・後澗を以て之を稱す。其の實は一氣貫注す。澗には未だ始めより前後有らず。此れ世の續游する者と、圖を觀て記を讀む者とは、皆之を知る。
2009年9月6日公開。