不動瀑
漫空の雲霧
青谷散人寫す
不動瀑
大響は坤軸を搖がし
高勢は雲中自りす
峭壁は墻の如く立ち
雪花夏風に翻る
旭莊
其の左肩を躋ること三四十武にして、不動瀑呈る。
水岩首從り迸り散る。姿態變化して旗靡き刃舞ひ、玉躍り雪翻る。嚮ひ邇づく可らず。
聲も亦洞を傾け山壑を撼がす。崖に立ちて之を望めば、瀑の發する所眉よりも高し。計れば當に五十尺を下らざるべし。漸く近づけば則ち飛沫雨と成る。衣袂盡く沾ふ。
其の潭は正方なり。崖石四圍す。泅いで之に入れば、窈瞑にして底を得ず。
其の右肩を踰えんと欲し、揭げて下流を涉る。崖下に就けば、巉岩錯立す。灌木其の隙を嵌す。幾んど通ず可らず。
岩を攀じ蘿を援き、蠖屈して登る。俯して視れば、則ち潭水黒き者、正に足下に當る。杜詩に所謂「一たび墜ちなば、那ぞ取ることを得ん」といふ者。自ら戒めて復た睨ず。僅に踰ゆるを得れば、徑稍平夷にして、心始めて定まれり。
附。墨を潑ぐ深潭湛くして流れず。重ねて來り自ら笑ふ壯心休するを。此の行猶ほ有り當年の友。記するや否や浮沈勇泅を共にするを。梁洲。
2009年3月28日公開。