日本漢文の世界

 

赤目四十八滝(観瀑図誌)








大日瀑解説

 大日滝は、遊歩道のコースからは外れているため、訪れる人がほとんどいない幻の滝です。梁洲先生も前記・後記の観瀑図誌にこの滝を漏らしてしまったのは、この滝が滝川の流れの中にある滝ではないからです。

赤目四十八滝(大日滝の標示) 日本漢文の世界 kambun.jp
大日滝の標示
不動滝を過ぎて、霊蛇滝(現在の千手滝)へ行くまでの間に、大日滝への登り口を示す標示があります

 滝見物に行ってきた観瀑図誌の画家・宮崎青谷らが大日滝を発見し、梁洲先生に告げたことで、梁洲先生も大日滝見物に行くことになります。

 四十八滝のエキスパートを自認していた梁洲先生にとって、知らない滝があることは、屈辱だったのでしょうか。指摘してくれた人に向かって「鬼の目にも見逃がし」などと負け惜しみを言い、「人を導こうとして、かえって人に導かれた」などと愚痴めいた感想を書いています。

 そこで、大日滝見物となったわけですが、「山道は二通りあるが、左側から登った」と、あっさり登りきって滝に到着しています。

 現在では、大日滝は四十八滝第一の難所です。ほかの滝は遊歩道があるため簡単に誰でも行けるのに対して、大日滝へ行くには、急な山道をロープを伝って登って20分ほど行くしかないのです。これは、ご老人やご婦人にはちょっと厳しいと思います。

赤目四十八滝(大日滝) 日本漢文の世界 kambun.jp
大日滝への登り道

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大日滝への登り道

 さて現在の大日滝は、雨の日の次の日には十分な水量があるのですが、普段は非常に水が少ないのです。私たちが行ったときも、水量が少なく、滝はまるで雨だれのような感じでした。

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大日滝

 梁洲先生も言っているように、滝壺が無いので、滝のすぐそばまで行くことができます。最近、大日滝に打たれる「ECOツアー」が開催されているとのことですが、梁洲先生がこの滝を訪れたとき同行した医者が、「頭痛のときに頭を冷やすのに調度よいですね」とコメントしたのと重なり、昔も今も人の考えることは同じだと、思わず微笑んでしまいます。

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大日滝
滝壺がありません

 「大日滝を観るの記」を加えたことで、『観瀑図誌』は完璧なものとなりました。この本によって赤目四十八滝は世に知られ、多くの観光客が訪れるようになり、後年遊歩道が整備されて、今日の盛況を見ることとなったのです。

 今日では、梁洲先生の『観瀑図誌』は、もはや顧みるひともない古い書物の一つになってしまいましたが、赤目四十八滝を世に知らしめた功績は、忘れられるべきではありません。(終)


2017年3月26日公開。

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