日本漢文の世界


網鯛解説

 今風にいうと「鯛三昧尾道グルメ紀行」といったところです。それも、舟を出して沖合いで鯛網をひきあげ、舟の中ですぐに調理して食するという、本格的なものです。
 鯛はまことに魚のなかの魚で、鯛一色でもてなしの献立ができるくらい、いろいろな料理ができます。ここでは、塩焼き、刺身、うしお汁が登場します。鯛を網で取る様子もみごとに描写されています。
 学海先生は、有名な尾道の鯛をたらふく食べられて、相当はしゃいでいるご様子で、得意の筆を存分に振るっています。読んでいるほうも「垂涎三尺」になってきそうです。
 ところで、グルメ描写の漢文は、実はありそうで少ないのです。漢学先生は、あまりグルメなどに現をぬかしてはいけなかったのかもしれません。そういう意味でも、これは貴重な文章です。

2002年1月20日公開。