日本漢文の世界


網鯛語釈

(いん)

酒を飲むこと。

(あぢ)

食物の味。ここでは「美味」のこと。

江鮮(かうせん)海鱗(かいりん)

川や海で捕れる魚。鮮も鱗も「さかな」という意味。

新獲(しんくわく)

新たな漁獲。

垂涎(すいぜん)三尺(さんじやく)

よだれが出るほど、食べたくてたまらないこと。

泥濘(でいねい)

どろ。

佳鮮(かせん)

おいしい魚。

頃者(このごろ)

「最近」という意味。

尾路(をのみち)

広島県の尾道。

(ぐう)

しばらく逗留(とうりゅう)すること。

橋本(はしもと)子純(しじゆん)

不詳。学海先生の友人。子純は字(あざな)。

向島(むかひじま)

尾道の対岸にある島。現在は尾道と橋でつながっているが、当時は渡し舟で行き来していた。 

製鹽場(せいえんぢやう)

塩田(えんでん)のこと。向島では、製塩や塩の交易が盛んであった。

鯛魚(てうぎよ)

鯛(たい)。わが国では、魚の中でもっとも珍重される。

脆肉(ぜいにく)

やわらかくて、うまい肉。「脆(ゼイ cuì)」は柔らかい肉という意味がある。ここでは、鯛を塩焼きにして食べている。

(ゆき)(あざむ)

真っ白であること。

醤油(しやうゆ)

わが国の「しょうゆ」。 

(いま)だしなり

まだまだ、こんなものではない。(これくらいで「うまい」といってもらっては困る。もっともっとうまい鯛を食べさせますぞ。) 

束装(そくしやう)

身支度をすること。装束(しょうぞく)ともいう。

朝暾(てうとん)

あさひのこと。 

碧玉(へきぎよく)

青い色の宝石。

琢成(たくせい)

みがいて、作り上げること。『礼記』学記に「玉、琢(みが)かざれば、器(き)を成さず」とある。

百貫島(ひやくくわんじま)

因島(いんのしま)と弓削島(ゆげしま)の間にある島。灯台で有名。(愛媛県弓削町)

篷底(ほうてい)

船底(ふなぞこ)。

舟子(しうし)

水夫のこと。

環列(くわんれつ)

輪になって並ぶこと。

逸失(いつしつ)

逃げられること。

朱鬛(しゆれふ)金鱗(きんりん)

朱鬛は、あかいひれ。金鱗は金色のうろこ。朱鬛金鱗とはもちろん鯛のこと。

潑剌(はつらつ)

魚が勢いよく跳ねる様子。

(あみ)

罾(ソウ zēng)は、四手網のこと。四手網は、四隅を竹で張った四角い網。かごのような形をしている。

(あた)

「付(フ fù)」は、「あたえる」という意味。(「つける」意味は「附(フ fù)」。)

巨鱗(きよりん)

大きな鯛。鱗はここでは鯛のこと。

此閒(ここ)

「此閒(cĭ jiān)」で「ここ」、「当地」という意味。白話語彙で、仏典にも出てくる語。

庖人(はうじん)

料理人。

(あつもの)

熱い吸い物。ここでは「うしお汁」のこと。

(なます)

刺身のこと。

芳脆(はうぜい)香膩(かうじ)

香りがよく、やわらかい、脂の乗った肉。

菅茶山(かんちやざん)

菅茶山(1748-1827)は、江戸時代の著名な漢詩人。頼山陽の師匠。広島の神辺(かんなべ)で廉塾(れんじゅく)を主宰していた。

()とす

非凡さに感嘆すること。

口腹(こうふく)云云

口腹とは飲食のこと。ラッキーなグルメ三昧ができて、うれしい。

2002年1月20日公開。