日本漢文の世界


二女斃狼語釈

(しん)()

信濃地方。現在の長野県。

(へき)

僻地ということばが示すとおり、ひなびたところということ。

猛獸(まうじう)

猛獣というと、虎やライオンを思い浮かべるが、これは狼の話。

松代(まつしろ)

松代藩は、真田氏十万石の封土であった。

封内(ほうない)

領内というのと同じ。

拂暁(ふつげう)

夜明け。

山足(さんそく)

山のふもと。

(くさか)

草刈りをすること。昔話にもでてくる「山へしばかりに」行っていた。

老狼(らうらう)

「老」の字には、「畏怖すべき」という意味があり、虎のことは、中国語では「老虎(lăo hŭ)」という。しかし、「老狼(lăo láng)」という言い方はない。「老虎」の連想による造語。

(うそぶ)

「嘘(xū)」は、息をシューと吹きかけること。

凝立(ぎようりつ)

じっと立っていること。 

怒躍(どやく)

たけり狂って飛びかかること。

奮起(ふんき)

ふるい立つこと。

(かうべ)

少女の頭部。(狼の頭部ではありません。)

躍噬(やくぜい)

飛びかかって、噛もうとした。 

(ねじふ)

「側(ソク cè)」は動詞としては、「かたむける」「伏せる」などの意味がある。狼の両耳をとらえて、力いっぱいねじ伏せた。

(おさ)

「據(キョ jù)」には、「おさえる(按)」という意味がある。

長號(ちやうがう)

大声で呼びつづけること。「助けてえええーーー!」と叫んだ。

(あねえ)

姐(ソ jiĕ)は、若い女性に呼びかけることば。

某氏(ぼうし)

特定の人名をふせていうときの言い方。「だれそれ」。狼と格闘した17歳の少女の名は「肥能(ヒノ)」というが、息軒は名前などは重要ではないと思い「某氏」とした。 

(うなじ)

くびすじ。

亂斫(らんしやく)

めった切りにすること。

年少(ねんせう)

わかもの。

蠕動(ぜんどう)

かすかに動くようす。「蠕」の字は、原文では「虫+耑」(セン)という字を使ってあるが、この字はユニコードでサポートされていないので、やむなく似た意味の「蠕」字で代用した。

()

二人(以上)で、かつぎあげること。

松代(まつしろ)(こう)

第9代藩主、真田幸貫。

六千(ろくせん)

当時の相場は、約960銭(文)で1貫(貫文)。つまり、6,000銭は、6貫文ほどになる。1両(小判1枚)は大よそ銭4貫文と交換されていたので、一両半のご褒美をいただいたことになる。

嘉永(かえい)戊申(ぼしん)

嘉永元年(1848年)。「戊申」は、「つちのえさる」。

2002年3月24日公開。