日本漢文の世界


中江藤樹傳語釈

(あざな)

元服したときに付ける名。

近江(あふみ)

現在の滋賀県。

(かく)

隠遁する。目立たないように生活する。

加藤(かとう)貞泰(さだやす)

加藤貞泰(1580-1623)は、初代大洲藩主。

大洲(おほず)

現在の愛媛県大洲市。

異稟(いひん)

非凡な資質。

童丱(どうくわん)

幼い子供。

大學(だいがく)

儒教経典『礼記(らいき)』中の一篇。朱子が四書の一つとした。朱子は『大学』のテキストを改定して『大学章句』を作成したが、王陽明はこれを信頼せず、『十三経注疏』の『礼記』のテキストをもとに『大学古本傍注』を作成している。

天子(てんし)

皇帝。

庶人(しよじん)

庶民。

壹是(いつし)

すべて。いっさい。

聖人(せいじん)

儒教でいう理想的な人間。古代の王である尭(ぎょう)、舜(しゅん)などが聖人とされている。また、儒教の創始者である孔子も聖人とあがめられている。

論語(ろんご)

孔子や孔子の弟子の言行を記した本。全10巻。

四書(ししよ)大全(たいぜん)

明の成祖が作らせたもので、四書に関する宋儒の注釈を集めた本。全36巻。

時俗(じぞく)

その時代の風俗。

士人(しじん)

学問教養を身につけた社会的地位の高い人。当時は武士の身分の者。

刻苦(こくく)

苦労を恐れず奮闘努力すること。

淬厲(さいれい)

鍛錬修行すること。(元の意味は刃物を研石で研ぐこと。)

凝思(ぎようし)

精神を集中して考えること。

精考(せいかう)

精思に同じ。じっくりと考えること。

夢寐(むび)

眠って夢を見ている間。

深造(しんざう)自得(じとく)

奥深くきわめて、自分自身で会得すること。

致仕(ちし)

官職を辞職すること。

歸養(きやう)

故郷に帰って父母をやしなうこと。

家什(かじふ)

家財道具。

(ひさ)ぐ。

売ること。

資銀(しぎん)

資金。

()

酒屋のこと。(元の意味は、酒屋の中にある酒がめを置く土台のこと。)

行誼(かうぎ)

道義にかなった行い。品行方正なこと。

諄篤(じゆんとく)

落ち着いて篤実であること。

孝經(かうきやう)

「こうけい」とも読む。儒教の根本経典である十三経の一つ。孝行こそが徳の本でり、君主がこれを励行すれば、国民は従順になり、天下泰平となると説いている。

愛敬(あいけい)

愛情と尊敬。「敬愛」に同じ。『孝経』にある言葉。

懇懇(こんこん)

真心をこめている様子。

自然(じねん)

「シゼン」と読んでもよい。おのずから。自然(しぜん)と。

感通(かんつう)

至誠の心が相手に通じて応答が得られること。自然と伝わること。

(しふ)

湿っていること。

(さう)

乾いていること。

氣習(きしふ)

気質と習慣。

(おほ)

おおい隠すこと。

發見(はつげん)

発現に同じ。現われること。

(みと)()

分かる。認識する。

存養(そんやう)

「存心養性」の略で、本心を失わないように良き性質を養い育てていくこと。

聖賢(せいけん)

聖人と賢人。

氣象(きしやう)

生まれつきの性質、性情。

訓諭(くんゆ)

教え諭すこと。

商賈(しやうこ)

商人。

廉恥(れんち)

私欲がなく潔白で、恥を知っていること。

旅舎(りよしや)

宿屋。

茗肆(めいし)

茶店。

庋閣(きかく)

とっておくこと。

収用(しうよう)

自分のものとして使用すること。ねこばば。

里人(りじん)

同郷の人。村人。

(えき)

宿駅。馬を乗り継ぐ場所。

(れん)

清廉潔白。善悪をわきまえ、欲にとらわれないこと。

郷人(きやうじん)

郷里の村人。

推尊(すいそん)

あがめ尊ぶこと。

學者(がくしや)

学問に志す人。

古藤(ことう)

藤の古木。

愚騃(ぐがい)

愚鈍であること。おろかなこと。

大成論(たいせいろん)

元の孫允賢(そん・いんけん)の著作『医方大成論』のこと。多くの医書から肝要を抜粋したもの。

醫筌(いせん)

中江藤樹が大野了佐のために表わした医書『捷径醫筌(しょうけいいせん)』のこと。「捷径」とは近道の意であり、「筌」は手引書の意。つまり「医学早わかり」という趣旨の題であるが、内容は多くの医書からの抜き書きであり、かなり大部の書物である。本格的な医書であり、入門書というおもむきではない。

(いへ)()

専門家として独立する。独自の存在となる。

精力(せいりよく)

ものごとをやりぬく力。

勤苦(きんく)

刻苦勉励すること。

二三子(にさんし)

きみたち。先生が弟子たちに呼びかけるときの言葉。

天資(てんし)

天賦の資質。

循循(じゆんじゆん)

整然として順序のある様子。

雅飭(がちよく)

正しく整っていること。

聞望(ぶんばう)

声望。名誉と人望。

諸侯(しよこう)

大名たち。

辟召(へきしよう)

招聘(しょうへい)する。

前後(ぜんご)

はじめから最後まで。

峻拒(しゆんきよ)

きっぱりと断ること。

備前(びぜん)

旧国名。現在の岡山県南東部。

國主(こくしゆ)

藩主。

池田(いけだ)光政(みつまさ)

池田 光政(いけだ・みつまさ、1609-1682)は、備前岡山藩主。中江藤樹の弟子・熊沢蕃山を招聘して大規模な藩政改革を行い、名君といわれている。わが国初の「庶民のための公立学校」として有名な閑谷学校も光政の創設である。

(れい)(あつ)くす

手厚い贈り物をする。

(へい)

贈り物をして賢者を招くこと。

(やまひ)(へい)なり

危篤になること。

婦女(ふぢよ)

成人の女性。

()

よりかかる。

兀坐(こつざ)

動かないで、じっと座る。

門人(もんじん)

弟子。

斯文(しぶん)

この学問。ここでは藤樹が築いた学問体系のこと。通常は儒学のこと。

(めい)

瞑目する。臨終を迎える。

斯文(しぶん)

この学問。ここでは藤樹が築いた学問体系のこと。(通常は儒学のことをいう。)

慶安(けいあん)元年(ぐわんねん)

西暦1648年にあたる。

熊澤(くまざは)伯繼(しげつぐ)

蕃山と号す。熊沢蕃山(1619-1691)は、中江藤樹の弟子で、当時池田光政に仕えていた。藩政改革を行い、各種土木事業を行ったことで有名になった。晩年に著書『大学或問』が筆禍にあい、幕府の命令により幽閉されている。

()

弔慰金を贈って葬送を助けること。

鄰里(りんり)郷黨(きやうたう)

近隣の人々。

涕泣(ていきふ)

涙を流して泣くこと。

(さう)

失う。ここでは親を亡くすこと。

邑人(いふじん)

村人。

祠堂(しだう)

霊屋(たまや)。死者の霊を祀る場所。

奉祀(ほうし)

死者の霊を祀ること。

墳墓(ふんぼ)

墓のこと。

耒耜(らいし)

農具の鋤(すき)のこと。

先導(せんだう)

先だって案内すること。

跪拜(くゐはい)

ひざまづいて拝むこと。

洒掃(さいさう)

掃除をすること。

(いぶか)

怪しむこと。

親故(しんこ)

親戚や旧友。

闔郷(かふきやう)

村中のみな。

欽仰(きんかう)

尊敬して敬うこと。

孝慈(かうじ)

親を大切にし、子孫をかわいがること。

(おん)

夫婦間の愛情。

(しつ)

家。

怒罵(どば)

怒って怒鳴ること。

和煦(わく)

温暖な気候のことだが、ここでは心情が温かなことにたとえている。

(しよく)として

主に。もっぱら。

(よう)(うごか)

居住まいを正すこと。

(むな)

虚偽であること。

敬拜(けいはい)

うやまい、おがむ。

2024年12月7日公開。