明治の大家、重野成斎先生による、佐久間象山先生顕彰の碑文です。象山先生は幕末の開国論者で、横浜開港の大恩人です。
成斎先生の文章には、感情を抑えた重厚なものが多く、どちらかというと玄人ごのみだといえます。しかし、この文章は、象山先生に実際に会い、その人物にすっかり敬服していた成斎先生の敬慕の思いがあふれていて、人の心を打つ名文になっています。成斎先生の文章の中でも、とくにすばらしいものの一つです。
佐久間象山先生は、開国を唱えた先覚者としての一面のほか、わが国ではじめて電信の実験を行うなど、科学史にも名を留めています。象山先生にとって蘭学は「夷の術を以って夷を制する」ナショナリズムを実行するためのものであり、開国論もこのナショナリズムにもとづくものでした。象山先生は長州系の刺客団に暗殺されましたが、維新以後明治政府が実行した政策は、象山先生のかねての主張に沿うものだったのです。(松本健一著『評伝佐久間象山』を参照。)
この碑は、碑文によれば、横浜の「伊勢山」に建てられたようです。私はすこし調べてみましたが、碑の場所など何もわかりませんでした。ご存知の方は、ご教示ください。
2001年8月26日公開。2002年8月31日一部修正。