日本漢文の世界


遊鳴門記解説

 淡路島の風流人、藤谷竹渓先生の作品を紹介できますことは、私にとって大きな喜びです。竹渓先生は、いままでほとんど世に知られていなかったからです。『竹渓詩文鈔』は、神戸の某書店で昨年偶然見つけました。独特な味わいのある文章に興味をもちましたが、作者の藤谷竹渓先生はいったいどういう方なのかいろいろ調べても分かりませんでした。最後に著者住所になっていた洲本の市役所に問い合わせたところ、教育委員会の方が『洲本市史』の掲載部分をメールで送ってくださいました。これはお許しをえて全文を作者小伝に掲載させていただいておりますので、ご覧いただきたいと思います。
 ここに紹介した文章は、竹渓先生が晩年に三度目の鳴門見物をしたときのことを綴った紀行文です。事実を淡淡と述べる中になんともいえない可笑しみが出ている好文章です。
奇岩を画にたとえているところや、「金持ちのボンボンにはこの興趣はわかるまい」といっているところなどは、斎藤拙堂の有名な『岐蘇川を下るの記』(『漢文名作選』所収)を意識したものでしょう。
 竹渓先生は渦潮を見るために並並ならぬ苦労をされています。要するに、昔は名勝は苦労して見るものだったのです。
今は苦労せずになんでも見られますが、それだけに名勝から受ける感銘も薄っぺらなものになってしまいました。私たちも竹渓先生からみれば、風流を解しないボンボンということになるでしょう。
 
 余談ですが、潮の名所としては、わが国の鳴門、中国の錢塘江(曲江)のほか、ノルウェーのメールストロームが有名です。メールストロームについては、ポーの小説に『渦潮に呑まれて(A Descent into the Maelstrom)』というのがあります。これはメールストロームに呑みこまれながら九死に一生を得て生還した男の、恐ろしい体験を描いたものです。これには森鴎外の訳(『うずしほ』)があり、『諸国物語』に入っています。それから、ヴェルヌの『海底二万里』でも、結末でノーティラス号がメールストロームに巻きこまれたことになっています。メールストロームは本当にこれらの小説に描かれているほどの恐ろしい渦潮なのでしょうか。いずれにせよ、潮の名所は危険海域です。

2012年4月25日の観潮会(2012年4月30日追加)

 2012年4月25日、日本漢文の勉強会の仲間と、念願の鳴門観潮に行きました。
 鳴門の観潮船は、徳島側から出ているものと、淡路島から出ているものがあります。
 徳島側の船は、小型で渦潮の中まで勇敢につっこんでゆくものです。淡路島から出ている船は、何百人も乗れる大型船で、帆船を摸したマストがあります。(ふだん帆を張ることはなく、エンジンで動きます。)私たちは、淡路側の船に乗りました。
 この写真は、南淡路の福良(ふくら)港です。現在このような観光施設ができています。中には、レストラン、みやげ物店、乗船券販売所等があります。

 

福良港の観光施設(うずしおドームなないろ館) 日本漢文の世界
福良港の観光施設(うずしおドームなないろ館)。
2012年4月25日撮影。

 観潮船は、このような立派なものです。この「日本丸」は、パンフレットによれば、最大700人も乗船できるそうです。

福良港の観潮船「日本丸」 日本漢文の世界
福良港の観光船「日本丸」。
2012年4月25日撮影。

 この船に乗って、鳴門見物に出かけます。鳴門海峡には、現在はご存知のとおり鳴門海峡大橋が架かっています。この橋は、下段は新幹線が通れるようになっているのですが、今は自動車道としてしか使用されておりません。

鳴門海峡大橋と鳴門の波 日本漢文の世界
鳴門海峡大橋と鳴門の波。
2012年4月25日撮影。

 鳴門では、引き潮のときに、太平洋側の水位が瀬戸内海側の水位よりも低くなるため、海流が勢いよく太平洋側(南側)へと流れます。水位差で、階段状の波が見られるのも特徴です。

鳴門海峡の階段状の波 日本漢文の世界
鳴門海峡の階段状の波。手前が太平洋側です。
2012年4月25日撮影。

鳴門海峡の階段状の波 日本漢文の世界
鳴門海峡の階段状の波。上には大橋が架かっています。
2012年4月25日撮影。

 そして、徳島側には、「うずしお」ができます。これは世界的に有名な渦潮です。地元では「世界遺産」へ登録する運動が起こってきました。

鳴門の渦潮 日本漢文の世界
鳴門の渦潮。向こうに見えるのは、飛島です。
2012年4月25日撮影。

鳴門の渦潮 日本漢文の世界
鳴門の渦潮。橋の下を観潮船が航行しています。
2012年4月25日撮影。

 福良港には、「洲崎(すざき)」という細長い島があり、天然の防波堤となっています。福良港には、造船所などもありますが、昔ながらの漁港です。

福良港の洲崎 日本漢文の世界
福良港の洲崎。細長い島です。
2012年4月25日撮影。

 船から降りたら、足湯「うずのゆ」に行ってみましょう。これは、近くの山頂にわき出た「筒井・潮崎温泉ゆーぷる」からお湯をもってきた足湯で、淡路島には珍しく塩分のない良質の温泉です。20分くらい、足を浸して温まると疲れが取れます。

福良港の足湯「うずのゆ」 日本漢文の世界
足湯「うずのゆ」。中央のあずまやの下に、足湯施設があります。
2012年4月25日撮影。

 足湯では物足りないという人は、ぜひ山頂の「ゆーぷる」を訪ねてみてください。温泉なのに、入湯料は何と600円です。しかも、泉質もすばらしく、ゆったりと入れる施設です。観光客よりも、地元の人たちの利用が多いようです。港からタクシーで片道1,000円程度です。

筒井・潮崎温泉ゆーぷる 日本漢文の世界
筒井・潮崎温泉ゆーぷる。山の上にあります。港からはタクシーで。
2012年4月25日撮影。

筒井・潮崎温泉ゆーぷる 日本漢文の世界
筒井・潮崎温泉ゆーぷるの内部。風呂の施設もなかなか良いです。
2012年4月25日撮影。

 福良には、あまり観光化されていない素朴さがあります。福良で見るものは、観潮船と温泉しかなさそうですが、どちらも素晴らしいものです。(終)

2003年4月29日公開。2012年4月30日一部追加。