書名 | 漢文名作選(第1集)5 漢文名作選(第2集)5 (ここでは上記の2冊の本を同時に紹介しています。) |
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副題 | 第1集 → 日本漢文 第2集 → 日本の漢詩文 |
シリーズ名 | 漢文名作選 |
著者 | 第1集5 → 鎌田正監修、菅野礼行・国金海二著 第2集5 → 鎌田正監修、国金海二・若林力著 |
出版社 | 大修館書店 |
出版年次 | 第1集5 → 昭和59年(1984年) 第2集5 → 平成11年(1999年) |
ISBN | 第1集5 → 9784469130355 第2集5 → 9784469130652 |
定価(税抜) | 第1集5 → 2,200円 第2集5 → 2,300円 |
著者の紹介 | 監修者の鎌田正博士(1911-2008)は、諸橋轍次博士の高弟として、大漢和辞典の修訂版を完成させた方です。菅野・国金・若林の三氏は、鎌田博士の弟子に当たられる方々です。 |
所蔵図書館サーチ | 漢文名作選 5 日本の漢詩文 (漢文名作選 ; 第2集 5) |
Amazonへのリンク | 漢文名作選〈第2集 5〉日本の漢詩文 |
本の内容:
漢文名作選出版の動機は、監修者鎌田正氏の恩師、諸橋轍次博士が、口癖のように言っていた、「だれか、われわれが若いときに学んで深い感動を覚えたことのある、古典の名作集を出してくれないだろうか」という言葉にあったといいます。 昭和59年(1984年)、漢文名作選第1集は、(1)思想、(2)歴史、(3)漢詩、(4)文章、(5)日本漢文、の五巻で出版されて好評を得ました。平成11年(1999年)に、第2集が出ました。第2集は、6巻からなり、(1)古代の思想、(2)英雄の群像、(3)古今の名詩、(4)名文と小説、(5)日本の漢詩文、(6)故事と語録、となっています。 この選集の特長は、文字が大きく読みやすいこと、当用漢字の字体を使用していること、現代語訳は分かりやすくていねいで、注釈はできるだけ簡潔にされていることなど、一般読者への配慮が徹底していることです。有名な詩文が多く収録されており、現代人の漢詩文の教養としては、この選集を熟読すれば十分といってよいくらいです。 そして、なにより特筆すべきことは、第1集、第2集とも1巻を日本漢文のために割いていることです。日本漢文のテキストがこのような入手しやすい選集に含まれていることは、非常にありがたいことで、監修者の見識に感服します。 それでは、どのような文章が採られているのか、具体的に紹介します。(詩は省略します。) 第1集 5 日本漢文 文章編 <史話> 重盛の苦衷(日本外史) 頼山陽 宇治川の先登(日本外史) 頼山陽 川中島の戦(日本外史) 頼山陽 桶狭間の戦(日本外史) 頼山陽 稲葉一徹の文学(近古史談) 大槻磐渓 阿閉掃部の武功(近古史談) 大槻磐渓 野中兼山の遠慮(先哲叢談) 原念斎 伊藤仁斎の赤貧(先哲叢談) 原念斎 青木昆陽(先哲叢談) 原念斎 <語録> 慎思録 三編 貝原益軒 言志四録 七編 佐藤一斎 <紀行> 岐蘇川を下るの記 齋藤拙堂 <評論> 進学の喩(栗山文集) 柴野栗山 鞭駘録に題す(宕陰存稿) 塩谷宕陰 三計塾の記(息軒遺稿) 安井息軒 楠氏論(日本外史) 頼山陽 <碑文> 梅里先生の碑 徳川光圀 烈士喜剣の碑 林鶴梁 第2集 5 日本の漢詩文 文章編 <1.推古朝の文章> 十七条憲法 抜粋(日本書記) 聖徳太子 <奈良時代の文章> 惑へる情を反さしむる歌序(万葉集) 山上憶良 梅花の歌序(万葉集) 大伴旅人 童子女の松原(常陸国風土記) <2.平安時代の文章> 馬の悪報(日本霊異記) 景戒 菩薩像の霊験(日本霊異記) 景戒 白箸翁(本朝文粋) 紀長谷雄 座左銘(本朝文粋) 兼明親王 富士山の記(本朝文粋) 都良香 <3.鎌倉・室町時代の文章> 静御前(吾妻鏡) 深耕の説(空華集) 義堂周信 枢玄極日山上人に答うる詩の序(蕉堅藁) 絶海中津 <4.江戸時代の文章> 扇の的と弓流し(日本外史) 頼山陽 謙信の美挙(日本外史) 頼山陽 道灌蓑を借る(野史) 飯田黙叟 芸侯諸子を戒む(近古史談) 大槻磐渓 山内一豊の妻(近古史談) 大槻磐渓 白石友を薦む(先哲叢談) 原念斎 徂徠の報恩(先哲叢談) 原念斎 赤壁の図の後に題す(艮斎文略続) 安積艮斎 藺相如の壁を報ずる図に題す(息軒遺稿) 安井息軒 安井仲平の東遊を送るの序(宕陰存稿) 塩谷宕陰 士規七則(野山獄文稿) 吉田松陰 なお、第2集 6 故事と語録に、慎思録と言志四録の一部が収録されています。 なかなか面白いものが集められています。第2集では、『吾妻鏡』まで出てきているのでちょっと驚きました。これは「変体漢文」と呼ばれるもので、全部漢字で書いてはありますが、一種の和文です。なお、敢えて不足をいうとすれば、明治の漢文も入れていただきたかった、ということです。 これだけの日本漢文を集めて、書き下し文と現代語訳をつけた本は、今のところ他にはありません。日本漢文に触れてみたい方は、まず手にとってみられることをお勧めします。 | |
2001年9月9日公開。 |