横潭
半潭松籟
半谷 復
青谷老人
横潭
横岩澗中に臥し
其の下に一潭開く
忽ち愕く神龍現るに
老松影を蘸し來る
旭莊
行くこと數十歩。巨岩偃然として澗中に横たはる。其の下を横潭と爲す。亦深紺なり。岩腹は垤堄・坳洼にして、攫みて出せしが若く、擠して隤せしが若し。岩の斷ずる處は、左崖之に接す。相距ること數十尺。穾然として窖に似る。泉の其の間に懸る者丈許り。老樹横より出て之を覆ふ。蘿の蜿蜒として下垂する有り。蒼龍澗に飲むが若し。始めて至るや、未だ其の全形を見ず。而して先ず珊然の聲を聞く。崖は石を以て身と爲し、樹を以て衣と爲す。松に類し樅に類す。邦俗云ふ所の栂也。皆畫中の趣有り。境の稍軒豁なるは、諸澗無き所なり。
2017年3月26日公開。