日本漢文の世界


採蕈記語釈

採蕈記(さいしんき)

蕈(シン xùn)はきのこ。記は文体のひとつで、事実をありのままにしるすもの。「きのことりの記」と訓読してもよい。

積雨(せきう)

ながあめ。

飄然(へうぜん)

ふらりと出てゆくさま。

(くるわ)()

「廓」(クワク kuò)は、「郭」とおなじで、町の外囲いというのが原義。ここでは、「町を出た」くらいの意味。 

森鬱(しんうつ)

うっそう(鬱蒼)と茂っているさま。

翠色(すいしよく)

みどりいろ。草や木の青緑色。

苔徑(たいけい)

こけむした小道。

松蕈(まつたけ)

音は「シヨウ ジン sōng xùn」。まつたけのこと。

樵叟(せうそう)

きこりのおじいさん。

蒙茸(もうじよう)

ものが乱れているさまを形容する畳韻の語。ここでは、草がぼうぼうとのびている草むらのこと。

(かさ)(かさ)

蓋(カイ gài)は柄のあるかさで、笠(リフ lì)はかぶりがさ。 

繭栗(けんりつ)

ちいさなまゆや栗のようなもの。花のつぼみやたけのこの生え始めなどをこの語であらわす。小さなまるいきのこのこと。

錯落(さくらく)

いりまじっている散らばっているさま。

參差(しんし)

長短ばらばらで、いりまじっていること。「シンシ cēn cī」と読む。

諷意(ふうい)

思うところをほのめかすこと。

丙戌(へいじゆつ)

ひのえいぬの年。明治19年。

2001年8月5日公開。