日本漢文の世界


觀曳布瀑遊摩耶山記解説

箕面大滝 日本漢文の世界
箕面大滝。
2010年11月28日撮影

箕面の唐人戻岩 日本漢文の世界
箕面の唐人戻岩。
2009年12月15日撮影

 江戸後期の文豪、斎藤拙堂先生の有名な紀行文です。神戸の布引の滝を描写した『観曳布瀑遊摩耶山記』と同じく、無駄がなく、簡潔でありながら、箕面の名勝を彷彿とさせる名文です。
 曲折のある布引の滝を小品の文章にたとえ、一直線に落ち下る箕面大滝を長編の文章にたとえるなどは、文人ならではの感慨です。常に文章のことが頭にある人でなければ、こういうことは書けません。
 箕面は、桜と紅葉の季節には、たいへん賑わう観光地です。滝周辺の山全体が、明治31年(1898年)に大阪府営「箕面公園」となり、昭和31年(1956年)国の「名勝」に指定されました。阪急電鉄箕面線で行けるので、大阪からのアクセスもよく(阪急梅田から箕面駅まで約30分)、公園内を散策したあとは、ふもとの公園入り口付近にある「箕面観光ホテル・スパーガーデン」で温泉に入ることもできます。

 

箕面大滝 日本漢文の世界
箕面大滝の右側にある建物。
2010年11月28日撮影

 拙堂先生は、京都の紅葉よりも箕面のほうがよいと書いておられます。当時は、有名な文人たちが、きそって訪れたほど、箕面は有名な紅葉の名所でした。しかし、いまでは箕面の紅葉は昔ほどではなく、京都の紅葉には及びません。また、箕面大滝の右側には、写真のようにコンクリート造の休憩所があります。これは、「名勝」指定後の昭和38年(1963年)に、公園を管理する大阪府が建設したものですが、名勝とアンマッチで無粋であると不評です。撤去の話は、府の財政難で難航しているそうです。

箕面公園の電線 日本漢文の世界
箕面公園の電線。
電線が無くなれば、とても素晴らしい景色になります。
2010年11月28日撮影

 名勝の復活を期して、箕面公園では、現在、紅葉の再生に取り組んでいるそうです。また、電線を地中化する計画もあるそうです。拙堂先生が訪れたときのような見事な紅葉が再生し、再び近畿第一の名勝となることを期待しています。

2010年5月1日公開。2011年1月1日写真更新。