熊は猛獣ですが、その怒りの感情を人間に利用されて、簡単に捕獲されてしまいます。まことに哀れではありますが、獣だからしかたがない。
ところが、人も目先の怒りや欲望のために身を滅ぼすものがたいへん多いのです。たとえばつまらぬ名誉のためや恋のために、たいせつな命を投げ出す愚かさは、熊なみであります。さように感情を抑えることは難しい。いや、熊は死んでも皮は敷物、肝は薬になりますが、人はいたずらに死んでも何も残りません。熊以下なのです。
竹堂先生は熊の話を聞いて、感情に走りがちな人間のおろかさを思ったのでしょう。この文章はちょっと『孟子』みたいです。
2002年1月14日公開。