日本漢文の世界


人力車語釈

吳服坊(ごふくばう)

東京の日本橋区呉服町(現中央区日本橋一丁目あたり)。当時から繁華街であった。「坊」には「まち」という意味がある。

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もたれかかること。

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すえつける。 

一輿(いちよ)

一台の輿(こし)。ここでは「かご」のこと。

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かつぎあげること。 

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迂遠であること。まわりくどくて、実際的でないということ。ここでは、経済的に非効率であること。

輪匠(りんしやう)

車輪を専門に作る職人。

安車(あんしや)

すわって乗る小型の車。

稟准(ひんじゆん)

許可を受けること。

(へう)

しるしとして掲げること。「官許」の二字を書いた紙か布を貼っていた。

輿丁(よてい)

かごかき人夫。

便(べん)(せふ)

どちらもすばやいという意味。 

(れん)

価格が安いこと。 

期年(きねん)

満一年。

行路(かうろ)

ここでは、みちを行くこと。道路交通というような意味。

支那(しな)

中国のこと。「支那」は蔑称ではなく、仏典に根拠のある由緒正しい呼称である。

(しゆ)

輸とは、移すこと。ここでは、輸出すること。

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支那、朝鮮。 

東洋車(とうやうしや)

中国人は日本のことを「東洋」という。「東洋車」は現在では略して「洋車(yáng chē)」と呼ばれている。 

行將(まさ)

「行将」の二字で、「まさに・・・せんとす」と訓読する。この二字で「いまにも・・・しようとしている」という意味の副詞である。

八道(はちだう)十九省(じふきうしやう)

ここでは朝鮮の八道のこと。朝鮮の八道は、京畿、江原、咸鏡、平安、黄海、忠清、慶尚、全羅。ちなみに中国の八道があり、淮東、淮西、湖北、浙東、浙西、江東、江西、湖南である。中国の十九省は、直隷、江南、山東、山西、河南、浙江、湖南、湖北、江西、陝西、甘粛、四川、福建、広東、広西、貴州、雲南の十八省に、新設の奉天省を加えたもの。明代の十五省制から始まり、清代に十八省となり、中華民国では二十八省となった。よって「八道十九省」とは、朝鮮および中国の全土という意味。

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語とは通常『論語』を指すが、この文は『中庸』第二十八章のもの。

(くるま)(くゐ)(おな)じうし云云

王者が天下を統一したことによって、車の寸法や使用する文字が同じになること。ここでは、交通が開け、情報交流が盛んになって、同一文化圏になること。

三國(さんごく)

日本、中国、朝鮮。

2001年11月10日公開。