日本漢文の世界


商人本色解説

 敬宇先生お得意の西洋物です。
 借金して贅沢すると破産するのは当然のことです。ところが、この当然の理が分からずに破産する者は、古来跡を絶ちません。
 この話は18世紀英国に材を取っているのですが、主人公の商人はいたってまじめな男です。それに債権者たちも善意で応えています。非常にうるわしい話です。
 「誠意をもって一所懸命努力すれば必ず成功する」という考え方をわが国に根付かせたのは、敬宇先生が訳した『西国立志編』の功績といわれますが、誠意が成功に結びつくためには、社会が健全でなければなりません。昨今の「正直者は馬鹿を見る」ような風潮の中では、この話もまるでおとぎ話のように思えてしまうのは、なんとも情けないことです。

2002年1月14日公開。