日本漢文の世界


記翁媼事解説

 この文章は、「かちかち山」の民話を帆足先生が漢文で採録されたものです。ただ、「かちかち山」で火打石をカチカチとやる場面は無く、狸に傷を負わせたのはおじいさんだということになっています。民話にはいろいろなバリエーションがあって面白いと思います。この民話に出てくる狸は、前半では狡猾なのに、後半ではまぬけです。そのため、昔からこれは二つの別の話をくっつけて作った話だといわれています。
 この文章は、帆足先生が書かれた文章読本『修辞通』の附録に、作文の実例として載っているものです。先生は達意実用の文章を尊ばれましたが、その中でも修辞に気を使われました。この小品にもその趣がうかがわれます。

2003年1月19日公開。