『月瀨記勝』乾巻には冒頭部分に図版が掲載されています。最初に月ヶ瀬附近の略地図、そして8葉の風景図です。
「記九」によれば、拙堂先生は当初「梅渓遊記」の各篇に対して宮崎子達らに一つずつ風景図を作らせ、各篇の左に掲載するという構成を考えていたことが分かります。しかし、実際に『月瀨記勝』版本に掲載された風景図は八葉で、それらは乾巻のはじめにまとめて載せられ、遊記ごとに分けて掲載したのではありません。その理由は、これらの風景図が特定の場面を指示する要素に欠ける、イメージ図に近いものであることにもよるのだと思われます。風景図6の月夜の舟遊び、風景図7の雨模様は、旅行では遭遇していない想像上の風景です。しかしながら、これらの風景図は当時の月ヶ瀬の姿を写していることは疑いなく、当時の月ヶ瀬を知りうる貴重な史料です。
以下に図版を掲載します。
月ケ瀬の略地図
風景図1
[題字]巖秀谷邃
[訓読]巖秀で谷邃し
[現代語訳]岩は高く、谷は深い。
風景図2
[題字]幽蹊蛇蟠
[訓読]幽蹊蛇蟠す
[現代語訳]山奥の小道は蛇行している。
風景図3
[題字]竹陰待渡
[訓読]竹陰に渡を待つ
[現代語訳]竹藪にて渡し舟を待つ。
[備考]「記五」に対応。
風景図4
[題字]遠嶺人家
[訓読]遠嶺の人家
[現代語訳]遠い山に人家が点在する。
[備考]「記六」に対応。
風景図5
[題字]遍地香雲
[訓読]遍地の香雲
[現代語訳]地面いっぱいに広がる香りのよい雲のような梅花。
[備考]「記七」に対応。
風景図6
[題字]清灘棹月
[訓読]清灘月に棹す
[現代語訳]清らかな流れに月が映る中を舟で行く。
[備考]「記三」に対応。
風景図7
[題字]雲濕雨香
[訓読]雲濕り雨香る
[現代語訳]雲が水気を帯びて、梅の香の雨が降る。
風景図8
[題字]古梵霽雪
[訓読]古梵霽雪
[現代語訳]古い寺に雪の後の晴天が広がる。
[備考]「記四」に対応。
2019年5月2日公開。
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