日本漢文の世界


高松栗林公園碑記語釈

碑記(ひき)

碑文のこと。

方今(はうこん)

現在。

絶域(ぜつゐき)

誰も行ったことのない遠い土地。ここでは、日本から見て西洋を言っている。

先聖(せんせい)

古代の聖人。具体的には孔子のこと。

生民(せいみん)

人民。

事爲(じゐ)

事業。

便(べん)なり

都合が良い。

百官(ひやつくわん)

各種の官吏。

四民(しみん)

士・農・工・商の人民。

駸駸然(しんしんぜん)

物事が日に日にどんどん発展してゆく様子。

昭運(せううん)

奈良県の吉野。桜の名所。

(らう)

苦労すること。

(いつ)

安楽を得ること。

(ふさ)がる

凝り固まる。憂鬱になる。

()

のんびりする。安閑とする。

僶俛(びんべん)

努力すること。

氣體(きたい)

生命の活力。

節宣(せつせん)

節制しながら、適度に発揮すること。

園囿(ゑんいう)

花や草木を植えたり、鳥を飼ったりして、観覧できるように整備された場所。

遊觀(いうくわん)

遊覧。楽しんで眺めること。

勞逸(らういつ)

疲労と安楽。

南郊(なんかう)

南の郊外。

栗林莊(りつりんさう)

栗林公園の藩政時代の呼び名。

(やま)()

背後の山(紫雲山)が栗林荘にかぶさっているように見えること。

寛曠(くわんくわう)

広大である。

勝景(しようけい)

美しい景色。

佳區(かく)

景色の美しい地域。

(きう)藩侯(はんこう)

明治維新前の藩主。

松平(まつだひら)()

寛永19年(1642年)、初代・松平頼重が高松藩主に任ぜられてから、明治の廃藩置県まで松平氏が11代にわたり藩主を務めた。

別業(べつげふ)

別荘。

寛永(くわんえい)年間(ねんかん)

寛永19年(1642年)、松平氏が高松藩主に封ぜられた。

英公(えいこう)

松平頼重(1622-1695)のこと。水戸徳川家初代藩主・徳川頼房の長男であるが、水戸家は弟の光圀が継ぎ、頼重は高松藩に封ぜられた。頼重は栗林荘の整備に着手し、延宝元年(1673年)に隠居して、栗林荘内に檜御殿を建てて住んだ。

先封(せんぽう)

前の領家。江戸時代には移封が多かった。生駒氏は、松平氏が領家となる前の領家である。

生駒(いこま)()

初代高松藩主・生駒親正は豊臣秀吉から讃岐国を与えられ、生駒氏は江戸時代に入ってからも引き続き藩主の地位にあった。しかし、第4代・高俊のときに生駒騒動と呼ばれるお家騒動により出羽国矢島に左遷された。

佐藤(さとう)道益(みちます)

生駒家の家老。現在の栗林公園の南湖一帯に、庭園を営んだ。生駒家が出羽国矢島へ左遷されたときに同行し、この地を後にしている。

居址(きよし)

居宅の跡。

(せつ)(けい)二公(にこう)

第2代藩主・松平頼常(1664-1704)と第3代藩主・松平頼豊(1680-1735)。第2代藩主・松平頼常のときは、飢饉の救済策として、栗林荘の造営に従事する者、木石を搬入するものに金を与えたので、元禄13年(1700年)には、栗林荘は、ほぼ現在の敷地まで拡張された。

穆公(ぼくこう)

第5代藩主・松平頼恭(1711-1771)。延享2年(1745年)から三年間にわたり、栗林荘の大改造を加えて、ついに完成させ、園の名所を選定して六十景とした。その後、栗林荘は明治維新にいたるまで、歴代藩主の下屋敷(別荘)として造園を続けた。

脩治(しうち)

修理整頓。

儒臣(じゆしん)

儒学をもって使える臣下。

林泉(りんせん)

「林木泉石」の略で、山林のこと。

(しよう)

勝地。

(もく)

名前。

嶰口(かいのくち)

北門のこと。もと嶰ノ口御門と言っていた。

潺湲池(せんかんち)

清水が潺湲(ゆっくり)と流れる池という意の命名で、もともと浅く作られていた。明治になってから、かなり狭くされたが、立派な石組が随所に残されている。

芙蓉沼(ふようせう)

北庭西部の大池で、夏には蓮(芙蓉)が咲くのでこの名が付いた。

渟泓(ていこう)

水が淀んでいて、深い。

(かん)

鏡のように姿が映ること。

西湖(せいこ)

園の西側にある紫雲山ぞいに南北に延びる湖。かつては広大であったが、現在では縮小されて、往時の面影はないという。

百花(ひやつくわ)(ゑん)

かつては四季を彩る草花が植えられていたためこの名が付いている。現在は、梅林と茶園になっている。

脩竹(しうちく)(をか)

旧日暮亭(ひぐらしてい)の東側の岡で、現在は松が植えられている。

戞玉(かつぎよく)(てい)

昔あった茶室の名前。現在はその場所に旧日暮亭が建てられている。ちなみに旧日暮亭は、明治初年に一民間人に売却されていたものを、昭和20年に現在の場所に再建した。戞玉亭の遺構として、降蹲踞(おりつくばい)が残っている。

鹿鳴原(ろくめいげん)

広広とした芝生広場である。

睡龍潭(すいりゆうたん)

鹿鳴原の南側にある池で、慈航嶼(じこうしょ)という中島がある。中島には二つの橋がかかっている。

紆餘(うよ)

まがりくねっている様子。

渺然(べうぜん)

遠くはるかな様子。

長橋(ちやうけう)

偃月橋(えんげつきょう)のこと。偃月とは弓張月(ほそい月)のこと。美しいそりをもつ大円橋である。

南湖(なんこ)

南庭の中心をなす大きな池。西は掬月亭に面し、中には神仙境をあらわす三つの島があり、東には偃月橋が架かる。

楓嶼(ふうしよ)

南湖に浮かぶ島。汀に楓(かえで)が多く植えられている。掬月亭に向かって奇岩が低く組まれている。

杜鵑嶼(とけんしよ)

南湖の島。杜鵑花(さつき)が植えられていることから、この名がある。

天女島(てんによたう)

南湖の島。正面に立石(塔)を立て、これを中心に石組がなされている。また、島の中央には巨大な柏の木がある。

(たふ)

天女島の立石のこと。

景象(けいしやう)

景色。

活流(くわつりう)

勢いよく流れること。

旱乾(かんかん)

日照りで、からからに乾くこと。

五邨(ごそん)

近隣の五つの村。

鯉鮒(りふ)

鯉(こい)と鮒(ふな)。

(しよく)

増える。

魚苗(ぎよべう)

稚魚。

傑構(けつこう)

すぐれた構築法。

波光(はくわう)瀲灩(れんえん)

水の流れで、水に映る影がゆらゆらと動くこと。

(かん)

欄干(てすり)のこと。

掬月亭(きくげつてい)

南湖に面した建物で、もと七つの棟が北斗七星のように配置されていたことから星斗館と呼ばれたが、のちに北側の二棟が取り払われ、残り五棟を掬月亭と呼ぶようになった。

巋存(きそん)

「巋然独存」ということで、高高とそびえ立つこと。

秀色(しうしよく)

姿が美しいこと。

突兀(とつこつ)

高くそびえる様子。

飛來峯(ひらいほう)

南湖の東側にある築山(人工の山)で、頂上から南湖を望むと、目の前に偃月橋がかかり、奥に掬月亭が見え、素晴らしい眺望である。

濆泉(ふんせん)

わきみず。栗林公園の東南端にある水源地で、「吹上」と名付けられている。

琮琤(そうさう)

泉がさらさらと音を立てる様子。

(とびいし)

泉流に飛び石を置くこと。「吹上」にはかつて飛び石がつくられ、茶室「考槃亭(こうはんてい)」に続いていたという。

棧道(さんだう)

がけなどに架け橋を渡した道。

玉澗(ぎよつかん)

南湖から北湖に通じる水路。

芙蓉峰(ふようほう)

北湖に面する築山で、富士山(別名芙蓉峰)に見立てて作ってあるので、この名がある。

飛猿巖(ひゑんがん)

大石を高く組み合わせ、樹木を配した岩山。石組は園中で最大である。生駒家の旧臣・佐藤道益の居邸跡であり、栗林荘発祥の地とされている。

會仙巖(くわいせんがん)

かつて広大であった西湖に面した巨大な石組であったが、現在では破壊されてしまい、往時の面影はない。

考槃(かうはん)

「考槃」とは、『詩経』衛風の語で、隠居して楽しむこと。考槃亭は、吹上に隣接する茶亭であり、考槃亭では、旧藩主が曲水の宴を張ったという。かつての考槃亭の跡には、現在では吹上亭という休憩所が立てられている。

棲霞(せいか)

これもかつてあった茶亭の一つで、静かなたたずまいであったという。

留春(りうしゆん)(かく)

かつて玉澗に架かる迎春橋を渡ると、左手にあった建物。まわりには桜樹が多く植えられていたという。

北湖(ほつこ)

芙蓉峰の前にある池。

涵翠池(かんすいち)

掬月亭の西側にある池。

鳳尾塢(ほうびう)

薩摩藩主・島津氏から寄贈されたという蘇鉄が植えられている。樹齢は二百年を超えており、総株数は四十三株という。香川県の天然記念物に指定されている。

鐡蕉(てつせう)

蘇鉄の異名。

叢生(そうせい)

群がって生えている。

蒼翠(さうすい)

深い緑色。

大致(だいち)

ここでは、いちばんの見どころという意。

茂草(もさう)

草がぼうぼうと茂った原っぱ。

傾陊(けいた)

傾き崩れる。

(おほむ)

ここでは「すべて」の意。

毀撤(きてつ)

壊して撤去する。

顚仆(てんぼく)

倒れる。

斬伐(ざんばつ)

木を切り倒すこと。

景趣(けいしゆ)

景色。

豁然(くわつぜん)

広く開けている様子。

舊觀(きうくわん)

もとの姿。公園が荒れ果てる以前の昔の姿にもどった。

達官(たつくわん)

高位高官。

士庶(ししよ)

士(官吏)と農工商の庶民。貴族に対する語。

倘佯(しやうやう)

「倘徉」「逍遥」に同じ。ぶらぶらと歩き回ること。

王道(わうだう)

道徳によって天下を治めること。

蕩蕩(たうたう)

広く行き渡っている様子。

百姓(ひやくせい)

多くの人民。

臺地(だいち)

見晴らしのきく高い土地。

平治(へいち)

平和な統治。

周文(しうぶん)

周の文王。武王の父で、生前は西伯と呼ばれた。徳をもって政治を行い、のちに儒家の政治の規範とされた。

政理(せいり)

政治。

廢興(はいこう)

「興廃」「興亡」と同じ。すたれることと、盛んになること。

2012年11月3日公開。