日本漢文へのいざない

 

第一部 日本文化と漢字・漢文

第五章 読解のための漢文法入門

第一節 漢文法へのいざない




(7)複句について

 複句については、教科書によりさまざまな定義がなされています。多くの文法書では、従句と主句の二つから構成される句というふうに定義されています。たとえば次のような句です。

【例句1】

章懿之崩、李淑護葬。(蘇轍『龍川別志』)

(訓読)章懿(しようい)(ほう)ずるや、李淑(りしゆく)(そう)(まも)る。

(現代語訳)章懿(しょう・い=人名)が亡くなったとき、李淑(り・しゅく=人名)が葬式の世話をした。

従句 主句
章懿之崩、 李淑護葬。

 しかし、私はこのような句は複句ではないと思います。私はこれを次のように考えています。

主語(主部) 謂語(述部)
章懿之崩、 李淑護葬。

 つまり、これは主語と謂語の関係です。漢文では、句首に独立して提示される語(のうち実詞)やフレーズ(短語)は、主語と見るほうがよいのです。(この句については→第3節(7)をも参照。)

 では、複句とはどういうものかというと、一つの主語に対して謂語が複数個あるものです。これは漢文では非常に多いです。

 例句を挙げておきます。『老子』と『論語』から一つずつ。

【例句1】

吾言易知易行。(『老子』第70章)

(訓読)()(げん)()(やす)(おこな)(やす)し。

(現代語訳)私の言葉は、分かりやすく、実践しやすいものである。

主語(主部)謂語(述部)謂語(述部)
主語謂詞賓語謂詞賓語
吾言行。

(第2句式の複句)

 ただし、上の例句も、謂語同士が並列された「聯合短語」(→2-16)と考えれば、第1句式に集約されてしまいます。(句式分類は、このように便宜的なものです。)

主語(主部)謂語(述部)=聯合短語
主語謂語(述部)謂語(述部)
主語謂詞賓語謂詞賓語
吾言行。

【例句2】

子哭之慟。(『論語』先進第十一)

(訓読)()(これ)(こく)して(どう)す。

(現代語訳)(最愛の弟子・顔淵が死んで)孔子は悲しみ泣いて、取り乱した。

主語(主部)謂語(述部)謂語(述部)
主語謂詞賓語謂詞
慟。

(第2句式と第1句式の複句)

 これも謂語同士を「聯合短語」と見ると、次のようになります。

主語(主部)謂語(述部)=聯合短語
主語謂語(述部)謂語(述部)
主語謂詞賓語謂詞
慟。

 以上、漢文の句式について、大まかな説明をしました。

 ここからは詞(word)と短語(phrases)について説明します。



2007年7月16日公開。

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