藤樹遺愛の藤
「藤樹先生補伝」『藤樹先生全集』第5冊197ページ
国会図書館デジタルコレクション 永続的識別子:info:ndljp/pid/1226462
現在の藤の木
S氏撮影
藤樹書院の広大な敷地の北東の一角に藤棚が作られています。この藤の木は、藤樹遺愛の藤の木だと言われています。
かつて存在した藤の巨木
高島市教育委員会発行の小学校副読本『藤樹先生』の口絵より
藤樹書院の藤の木といえば、かつてはこの写真の「藤の巨木」が有名でした。藤は蔓性の植物で、何かに巻き付かなければ自立できません。この巨木は、藤の木の傍らに自生していた榎実(よのみ)の木に藤の蔓が巻き付き、「藤の巨木」になっていたものです。この「藤の巨木」は、藤樹書院を紹介する記事などでは、必ず写真付きで紹介される有名な木だったのですが、残念ながら今はありません。
それは、この榎実(よのみ)の木が倒木の恐れから、平成11年(1999年)に伐採されてしまったからです。榎実(よのみ)の木は傾きは次第にひどくなり、通学路・バス道となっている道路に、いつ倒れてきてもおかしくない危険な状態となっていたため、伐採はやむを得なかったそうです。毎年全国各地で起きている公園樹や街路樹の倒木事故で犠牲になる人がいるのを見れば、「由緒ある木を何とかして保存できなかったのか」などと言って当局者を責めるのは酷な話です。
榎実(よのみ)の木の伐採時の年輪は260年あまりだったそうです。つまりこの木は、藤樹没後100年前後に生えてきたもので、藤樹の在世当時には存在しておらず、生前の藤樹とは無関係な木だったということになります。
現在「藤の巨木」はなくなっています
この藤の木は、藤樹遺愛の藤の木である可能性があります。
「巨木」は伐採されてしまいましたが、巨木に蔓を巻き付けていた藤の木は健在です。藤の木は長寿で、樹齢千年を超えるものもあるそうです。ですから、今ある藤の木が藤樹遺愛の藤の木である可能性は十分にあるのです。
藤樹の死後400年を経ても、藤樹書院と藤樹遺愛の藤の木、そして藤樹の墓は現存していて、地元では自治体や住民たちが今も協力して保存に努力しているのです。
2024年12月7日公開。