動詞が二重の賓語(双賓語)を取る場合、動詞と二つの賓語が双賓短語を形成します。双賓短語が謂語となる場合は、第3句式になります。
双賓短語においては、動詞の作用を受ける人を表す賓語(西洋式にいえば間接賓語)と、動詞の作用を受ける事物を表す賓語(西洋式にいえば直接賓語)があります。
これらの賓語は互いに入れ替えることもできます。人をあらわす賓語が事物をあらわす賓語よりも後に置かれる場合には、人を表す賓語は介詞「於」を伴います。
また、人を表す賓語が代詞「之」である場合には、事物を表す賓語よりも前に置かれます。
【例句1】
或問之年。
(訓読)
(現代語訳)ある人が、彼ら(三人の老人)に年齢を聞いた。
或 問 之 年。
謂詞 賓語 賓語
└───────┘
(双賓短語)
主語 謂語
(第3句式)
この句は、蘇軾の『志林』から採ったものですが、次のように言い換えることができます。
【例句2】
或問之以年。
(訓読)
或 問 之 <以> 年。
謂詞 賓語 <介詞> 賓語
└─────────────┘
(双賓短語)
主語 謂語
(第3句式)
これは第二賓語の前に介詞「以」が入った形ですが、句式も意味も例句1と全く同じです。この「以」には特に意味があるわけではなく、「以」の後の賓語が人をあらわす賓語ではなく、事物をあらわす賓語であるということを強調するにすぎません。だから、「以年」を介賓状語(介賓補語)と見るべきではありません。
ところが、訓読では「以」を「もってす」と読んでいるため、例句1の訓読とは読む順番が変わってしまいます。
訓読の違いを図解すると、次のとおりです。
A B C D
主語 動詞 第一賓語 第二賓語
→A Cに D を Bす
A B C <以> D
主語 動詞 第一賓語 <以> 第二賓語
→A Cに Bするに D を以ってす
もう一つの言い換えは次のようになります。
【例句3】
或問年於三老人。
(訓読)
或 問 年 於三老人。
謂詞 賓語 賓語
└─────────┘
(双賓短語)
主語 謂語
(第3句式)
これは、例句1とは第一賓語と第二賓語が入れ替わっています。人をあらわす賓語が後ろに来たときには、その前に介詞「於」を置くのが普通です。この場合も介詞「於」があるからという理由で「於○○」を介賓状語(介賓補語)と見る必要はありません。「於」がないとき同様、賓語と扱うほうが実態に即しています。
もう一つ別の例を出します。
【例句4】
吾・・求之診。(蘇軾『志林』)
(訓読)
(現代語訳) 私は医者に診察をしてもらう。
吾・・求 之 診。
謂詞 賓語 賓語
└───────┘
(双賓短語)
主語 謂語
(第3句式)
この句も次のように言い換えることができます。
【例句5】
吾・・求之以診。
(訓読)
吾・・求 之 以診。
謂詞 賓語 賓語
└───────┘
(双賓短語)
主語 謂語
(第3句式)
【例句6】
吾・・求診於医。
(訓読)
吾・・求 診 於医。
謂詞 賓語 賓語
└───────┘
(双賓短語)
主語 謂語
(第3句式)
※双賓短語に関しては、廖振佑著『古代漢語特殊語法』(中国:内蒙古人民出版社)245ページ以下に多くの用例を載せていますから、参考にしてください。また、『古漢語語法及其発展』(楊伯峻、何楽士共著、中国:語文出版社)559ページ以下も参照。
2007年7月16日公開。
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