日本漢文へのいざない

 

第一部 日本文化と漢字・漢文

第五章 読解のための漢文法入門

第4節 特殊な短語




(12)所字短語8 所者短語1

 ここまで、者字短語と所字短語を見てきましたが、この両方がセットになっていることがよくあります。所~者がセットになって短語を形成するものを、仮に「所者短語」と名づけます。

 これは、「所字短語」にさらに「者」がくっついて、「者字短語」となったものです。

【例句1】

所不見者、独鬼神耳。(蘇軾『石氏画苑記』)

(訓読)()ざる(ところ)(もの)は、(ひと)鬼神(きしん)(のみ)

(現代語訳)目に見えないものといったら、鬼神くらいのものだ。

所→不見
目に見えない対象

 これは「所不見」だけでもよいのですが、「者」をつけると四文字になり、リズムがよいのです。このように虚詞はリズムによって、つけたり取ったりされます。

主語(主部)=所者短語謂語(述部)
定中短語<助詞>
[定語]謂詞
所不見者、[独] 鬼神<耳>。

【例句2】

蓋公之所能者、天也。(蘇軾『潮州韓文公廟碑』)

(訓読)(けだ)(こう)()くする(ところ)(もの)は、(てん)(なり)

(現代語訳)思うに、韓文公が為しえたことは、天(に属することがら)であった。

所→能
なしうる対象

公之→所→能
韓文公がなしうる対象

 これに「者」がつくと、さらに安定した感じがでます。

公之→所→能⇒者
韓文公がなしうる対象(意味は同じ)

主語(主部)=所者短語謂語(述部)
<句首助詞>主詞=所者短語(之字短語)謂詞<句末助詞>
<蓋>公之所能者、<也>。



2007年11月11日公開。

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