日本漢文へのいざない

 

第一部 日本文化と漢字・漢文

第五章 読解のための漢文法入門

第4節 特殊な短語




(10)所字短語6 「所謂」(いわゆる)

 次に、「所謂」(いわゆる)という「所」を用いた慣用的用法について説明します。

【例句1】

此臣所謂大患也。(蘇軾『教戦守』)

(訓読)()(しん)所謂(いわゆる)大患(だいかん)(なり)

(現代語訳)これが、それがしの言う大きなわざわいでございます。

所→謂→大患
言及する(対象としての)大きなわざわい

臣→所→謂→大患
臣(それがし)が言及する(対象としての)大きなわざわい

主語(主部)謂語(述部)=(所字短語=主謂短語)
主詞謂詞=所字短語賓語<助詞>
所謂大患 <也>

 「所謂」は「いわゆる」と訓読しますが、上の句では、他の「所字短語」と構造上なんら変わりありません。「所謂」を「いうところの」と訓読してもかまいません。

【例句2】

此所謂忠厚之至。(蘇軾『志林』)

(訓読)()所謂(いわゆる)忠厚(ちゆうこう)(いた)りなり。

(現代語訳)これこそ、いわゆる真心をつくすということだ。

主語(主部)謂語(述部)=定中短語
[定語]謂詞=之字短語
[所謂]忠厚之至。



2007年11月11日公開。

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