次に、「所謂」(いわゆる)という「所」を用いた慣用的用法について説明します。
【例句1】
此臣所謂大患也。(蘇軾『教戦守』)
(訓読)此れ臣の所謂大患也。
(現代語訳)これが、それがしの言う大きなわざわいでございます。
所→謂→大患
言及する(対象としての)大きなわざわい
臣→所→謂→大患
臣(それがし)が言及する(対象としての)大きなわざわい
主語(主部) | 謂語(述部)=(所字短語=主謂短語) | |||
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主詞 | 謂詞=所字短語 | 賓語 | <助詞> | |
此 | 臣 | 所謂 | 大患 | <也> |
「所謂」は「いわゆる」と訓読しますが、上の句では、他の「所字短語」と構造上なんら変わりありません。「所謂」を「いうところの」と訓読してもかまいません。
【例句2】
此所謂忠厚之至。(蘇軾『志林』)
(訓読)此れ所謂忠厚の至りなり。
(現代語訳)これこそ、いわゆる真心をつくすということだ。
主語(主部) | 謂語(述部)=定中短語 | |||
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[定語] | 謂詞=之字短語 | |||
此 | [所謂] | 忠厚之至。 |
2007年11月11日公開。