所字短語は、「所」字が付加されたにも関わらず、動詞・形容詞としての性質や、述賓短語としての性質が失われないことは、前項で見たとおりです。
ですから、「所」字の前に主語になる名詞(名詞性短語)を付加すれば、所字短語は主謂詞組(ネクサス)になります。
【例句1】
周文・武所封子弟同姓甚衆。(蘇軾『論封建』)
(訓読)周の文・武封ずる所の子弟は、同姓甚だ衆し。
(現代語訳)周の文王・武王が封建により国を与えた子弟は、周の王家と同姓の者が非常に多かった。
この例句も順を追って、構造を解明しましょう。
所封(所字短語)
土地を与えた対象
↓
所封→子弟(所字短語=述賓短語)
土地を与えた対象としての子弟
↓
主語の付加
周 文・武 → 所封子弟
周の文王・武王が、土地を与えた(対象としての)子弟
「所」字の前に、主体となる「周文・武」が付きました。
こうしてできた所字短語「周文・武所封子弟」は、主謂短語(ネクサス)になっています。
(図解)
所字短語(主謂短語) | ||
---|---|---|
主詞 | 謂詞(所字短語) | 賓語 |
周文・武 | 所封 | 子弟 |
(句全体の図解)
主語(主部)=所字短語(主謂短語) | 謂語(述部)=主謂短語 | ||||
---|---|---|---|---|---|
主詞 | 謂詞=述賓短語(所字短語) | 主詞 | 謂詞=状中短語 | ||
謂詞(所字短語) | 賓語 | [状語] | 謂詞 | ||
周文・武 | 所封 | 子弟 | 同姓 | [甚] | 衆。 |
2007年11月11日公開。