日本漢文へのいざない

 

第一部 日本文化と漢字・漢文

第五章 読解のための漢文法入門

第4節 特殊な短語




(7)所字短語3 ネクサスとしての所字短語

 所字短語は、「所」字が付加されたにも関わらず、動詞・形容詞としての性質や、述賓短語としての性質が失われないことは、前項で見たとおりです。

 ですから、「所」字の前に主語になる名詞(名詞性短語)を付加すれば、所字短語は主謂詞組(ネクサス)になります。

【例句1】

周文・武所封子弟同姓甚衆。(蘇軾『論封建』)

(訓読)(しゆう)(ぶん)()(ほう)ずる(ところ)子弟(してい)は、同姓(どうせい)(はなは)(おお)し。

(現代語訳)周の文王・武王が封建により国を与えた子弟は、周の王家と同姓の者が非常に多かった。

 この例句も順を追って、構造を解明しましょう。

所封(所字短語)
土地を与えた対象

 ↓

所封→子弟(所字短語=述賓短語)
土地を与えた対象としての子弟

 ↓

主語の付加

周 文・武 → 所封子弟
周の文王・武王が、土地を与えた(対象としての)子弟

 「所」字の前に、主体となる「周文・武」が付きました。

 こうしてできた所字短語「周文・武所封子弟」は、主謂短語(ネクサス)になっています。

(図解)

所字短語(主謂短語)
主詞謂詞(所字短語)賓語
周文・武所封子弟

(句全体の図解)

主語(主部)=所字短語(主謂短語)謂語(述部)=主謂短語
主詞謂詞=述賓短語(所字短語)主詞謂詞=状中短語
謂詞(所字短語)賓語[状語]謂詞
周文・武所封子弟同姓[甚]衆。



2007年11月11日公開。

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