日本漢文へのいざない

 

第一部 日本文化と漢字・漢文

第五章 読解のための漢文法入門

第4節 特殊な短語




(6)所字短語2 所字短語が賓語を取る場合

 所字短語は賓語を取ることができます。

 まず実例を見ていただきましょう。

【例句1】

所見人物、皆吾画笥也。(蘇軾『石氏画苑記』)

(訓読)()(ところ)人物(じんぶつ)は、(みな)()画笥(がし)(なり)

(現代語訳)目に見えた人や物は、すべて私の絵の作品箱の中に入ってしまうのだよ。

「所」は動詞「見」と一体化して、「見る対象」という意味の所字短語になります。

所+見 (みる対象)

 この所字短語は、さらに賓語を取ることができます。

所字短語(述賓短語)
所字短語賓語
所見人物

 「所見+人物」でひとつの大きな所字短語となり、「見る対象としての人物」という意味になります。賓語を取ることができることを見れば、所字短語「所見」は動詞としての性質を保持していることがわかります。「所見人物」も所字短語ですが、同時に述賓短語でもあるわけです。

 訓読は次のどちらでも構いません。

(訓読)見る所の人物

(訓読2)所見の人物

(句全体の図解)

主語(主部)=所字短語(述賓短語)謂語(述部)=定中短語
所字短語賓語[定語][定語]謂詞<助詞>
所見人物、[皆][吾]画笥<也>。



2007年11月11日公開。

ホーム > いざない > 漢文と日本文化 > 所字短語2 所字短語が賓語を取る場合

ホーム > いざない > 漢文と日本文化 > 所字短語2 所字短語が賓語を取る場合