「者」の性質が少し分かっていただけたのではないかと思います。次に、「者」が名詞の後に置かれる例を見ます。
名詞はもともと「名詞」ですから、わざわざ「名詞化」する必要はありません。「者」が名詞の後に置かれる場合は、主語となる場合に限られているため、「結構助詞」としての用法ではなく、「語気助詞」としての用法であるとの説もあります。(楊伯峻・何楽士 著『古漢語語法及其発展』、中国:語文出版社、706ページを参照。)
【例句1】
封建者、争之端而乱之始也。(蘇軾『論封建』)
(訓読)封建なる者は、争いの端しにして乱の始め也。
(現代語訳)封建制度こそは、争いの端緒であり、叛乱の始まりである。
封建→者
訓読は、「封建なる者は」と読むほか、「封建とは」と読んだり「者」字を「置き字」(訓読しない字)として「封建は」と読んだりします。この句では「者」が無くてもよいのですが、「者」があることにより、「封建こそは」、「そもそも封建というのは」というような重重しい感じを出しているわけです。
主語(主部)=者字短語 | 謂語(述部)=聯合短語 | |||
---|---|---|---|---|
謂詞=之字短語 | <連詞> | 謂詞=之字短語 | <助詞> | |
封建者、 | 争之端 | <而> | 乱之始 | <也>。 |
【例句2】
戦者、必然之勢也。(蘇軾『教戦守』)
(訓読)戦いなる者は、必然の勢い也。
(現代語訳)戦争は、それこそ必然の趨勢なのである。
これも【例句1】と同じく名詞+「者」の例です。
主語(主部)=者字短語 | 謂語(述部) | |
---|---|---|
謂詞=之字短語 | <助詞> | |
戦者、 | 必然之勢 | <也>。 |
2007年11月11日公開。