日本漢文へのいざない

 

第一部 日本文化と漢字・漢文

第五章 読解のための漢文法入門

第4節 特殊な短語




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(2)者字短語2 名詞+者

 「者」の性質が少し分かっていただけたのではないかと思います。次に、「者」が名詞の後に置かれる例を見ます。

 名詞はもともと「名詞」ですから、わざわざ「名詞化」する必要はありません。「者」が名詞の後に置かれる場合は、主語となる場合に限られているため、「結構助詞」としての用法ではなく、「語気助詞」としての用法であるとの説もあります。(楊伯峻・何楽士 著『古漢語語法及其発展』、中国:語文出版社、706ページを参照。)

【例句1】

封建者、争之端而乱之始也。(蘇軾『論封建』)

(訓読)封建(ほうけん)なる(もの)は、(あらそ)いの(きざ)しにして(らん)(はじ)め也。

(現代語訳)封建制度こそは、争いの端緒であり、叛乱の始まりである。

封建→者

 訓読は、「封建なる者は」と読むほか、「封建とは」と読んだり「者」字を「置き字」(訓読しない字)として「封建は」と読んだりします。この句では「者」が無くてもよいのですが、「者」があることにより、「封建こそは」、「そもそも封建というのは」というような重重しい感じを出しているわけです。

主語(主部)=者字短語謂語(述部)=聯合短語
謂詞=之字短語<連詞>謂詞=之字短語<助詞>
封建者、争之端<而>乱之始<也>。

【例句2】

戦者、必然之勢也。(蘇軾『教戦守』)

(訓読)(たたか)いなる(もの)は、必然(ひつぜん)(いきお)(なり)

(現代語訳)戦争は、それこそ必然の趨勢なのである。

 これも【例句1】と同じく名詞+「者」の例です。

主語(主部)=者字短語謂語(述部)
謂詞=之字短語<助詞>
戦者、必然之勢<也>。



2007年11月11日公開。

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