この節では、「特殊な短語」である「者字短語」と「所字短語」を扱います。
「者」は、訓読では「もの」と読みます。「者」は不思議な詞で、「○○者」のように「者」のまえにくっついた詞(短語)と一体化して一つの名詞(または名詞性短語)になるのです。「者」の品詞は結構助詞であるとされています。
さて、「者」は、「○○なる者(もの)」、「○○する者(もの)」などと訓読しますが、まれに「○○する者(こと)」、「○○する者(ところ)」と訓読されることもあります。「者」字の前に置かれる詞や短語は、たった一字でもよく、逆にどんなに長い主謂短語であってもよいのです。
まず、「者」の前に動詞・形容詞がくっついて、二字の複合詞になる例を見てみましょう。
形容詞+「者」で時間詞(時間を表す名詞)になるもの
古+者 → 古者(むかし)
昔+者 → 昔者(むかし)
今+者 → 今者(いま)
動詞・形容詞+「者」 で、人を表す名詞になるもの
智+者 → 智者(知恵のある人)
愚+者 → 愚者(愚かな人)
憂+者 → 憂者(うれえる人)
病+者 → 病者(病人)
動詞性の複合詞+「者」でも人を表す名詞になります。この場合は、複合詞というよりも短語と見てよいでしょう。
流涕+者 → 流涕者(涙を流す人)
【例句1】
父老過之、有流涕者。(蘇軾『表忠観碑』)
(訓読)父老之に過り、涕を流す者有り。
(現代語訳)土地の老人の中には、その前(呉越国王銭氏の荒れ果てた墓の前)を通りかかって、涙を流す者もある。
これは、2つの句からなっています。
主語(主部) | 謂語(述部)=述賓短語 | |||
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謂詞 | 賓語 | |||
父老 | 過 | 之 |
謂語(述部)=述賓短語 | |||
---|---|---|---|
謂詞 | 賓語=者字短語 | ||
有 | 流涕者。 |
2007年11月11日公開。