日本漢文へのいざない

 

第一部 日本文化と漢字・漢文

第五章 読解のための漢文法入門

第3節 主謂短語




(9)主謂賓語(ネクサス目的語)について

 ここでは、主謂短語(ネクサス)が賓語になっている「主謂賓語」(ネクサス目的語)について説明します。

 主謂短語が賓語になる場合は、感情・知覚をあらわす動詞の賓語、祈使動詞(使役をあらわす動詞)の賓語、有無句の賓語のいずれかです。

 まず知覚動詞の場合を見てみましょう。

【例句1】

余愛其語有理。(蘇軾『志林』)

(訓読)()()()()あるを(あい)す。

(現代語訳)私は、その発言に筋が通っているのを愛でた。

主語(主部)謂語(述部)=述賓短語
謂詞賓語=主謂短語
主詞謂詞賓語
其語理。

 訓読では、「其語有理」(其の語、理有り)という主謂短語(nexus)が動詞「愛」の賓語(目的語)になると、「其の語の理ある」のように「の」でつなぎ、連体形止めにして、ネクサスをひとまとまりの体言として「を」で受けます。

(訓読の工夫 図解)

主語述語
其の語理あり。

      ↓
主語目的語述語
其の語  の  理ある を愛す。

【例句2】

 訓読で、主謂賓語の主・謂の間に「の」を入れて読むかわりに「や」を入れて読む例外的な場合があります。それは、賓語となっているネクサスにおいて、「之字短語」の主謂主語をもつものです。

(余)知晋室之乱也久矣。(蘇軾『志林』)

(訓読)()晋室(しんしつ)(みだ)るる()(ひさ)しきを()る。

(現代語訳)私は晋王室の綱紀が乱れて時間がたち、(人心の荒廃が凄まじいことを)知ったのである。

主語(主部)謂語(述部)=述賓短語
謂詞
賓語=主謂短語
主語=主謂短語(之字短語)謂語<助詞>
主詞之字謂詞<助詞>
(余)晋室<矣>。

※原則どおりに「晋室の乱るるの久しきを知る」と訓読しても間違いではありません。



2007年7月16日公開。

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