ここでは、主謂短語(ネクサス)が賓語になっている「主謂賓語」(ネクサス目的語)について説明します。
主謂短語が賓語になる場合は、感情・知覚をあらわす動詞の賓語、祈使動詞(使役をあらわす動詞)の賓語、有無句の賓語のいずれかです。
まず知覚動詞の場合を見てみましょう。
【例句1】
余愛其語有理。(蘇軾『志林』)
(訓読)余、其の語の理あるを愛す。
(現代語訳)私は、その発言に筋が通っているのを愛でた。
主語(主部) | 謂語(述部)=述賓短語 | |||
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謂詞 | 賓語=主謂短語 | |||
主詞 | 謂詞 | 賓語 | ||
余 | 愛 | 其語 | 有 | 理。 |
訓読では、「其語有理」(其の語、理有り)という主謂短語(nexus)が動詞「愛」の賓語(目的語)になると、「其の語の理ある」のように「の」でつなぎ、連体形止めにして、ネクサスをひとまとまりの体言として「を」で受けます。
(訓読の工夫 図解)
主語 | 述語 |
其の語 | 理あり。 |
主語 | 目的語 | 述語 |
余 | 其の語 の 理ある を | 愛す。 |
【例句2】
訓読で、主謂賓語の主・謂の間に「の」を入れて読むかわりに「や」を入れて読む例外的な場合があります。それは、賓語となっているネクサスにおいて、「之字短語」の主謂主語をもつものです。
(余)知晋室之乱也久矣。(蘇軾『志林』)
(訓読)余、晋室の乱るる也久しきを知る。
(現代語訳)私は晋王室の綱紀が乱れて時間がたち、(人心の荒廃が凄まじいことを)知ったのである。
主語(主部) | 謂語(述部)=述賓短語 | ||||||
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謂詞 | |||||||
賓語=主謂短語 | |||||||
主語=主謂短語(之字短語) | 謂語 | <助詞> | |||||
主詞 | 之字 | 謂詞 | <助詞> | ||||
(余) | 知 | 晋室 | 之 | 乱 | 也 | 久 | <矣>。 |
※原則どおりに「晋室の乱るるの久しきを知る」と訓読しても間違いではありません。
2007年7月16日公開。