主語たる之字短語の前に「方」「当」の字が置かれる場合について見ておきましょう。
「方」「当」は、訓読で「あたる」と動詞のように読みますが、実は「その時節に当面する」という意味の介詞です。
【例句1】
方秦之未得志也、使復有一孟子、則申韓為空言。(蘇軾『六一居士集序』)
(訓読)秦の未だ志を得ざるに方りて也、復た一の孟子有ら使めば、則ち申・韓は空言と為りしならん。
(現代語訳)秦がまだ天下を統一していない時に、孟子のような人物が再び出現していたならば、申不害や韓非子の学問は(世に行われず)空言となっていたであろうに。
この句で「孟子あらしめば」の部分の「使」は訓読では「~しめば」と使令句(使役文)のように読んでいますが、実は仮定を表す連詞です。ですから「使」の字は「もし」と訓読することも可能です。「使有~」は「もし~があったならば」と慣用的に使われるフレーズです。
この句では「使復有一孟子、則申韓為空言」の部分も主謂短語と見るべきです。
主語(主部)=主謂短語(之字短語) | ||||||
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<介詞> | 主語 | 之字 | 謂語=状中短語 | <助詞> | ||
[状語] | 述賓短語 | |||||
謂語 | 賓語 | |||||
<方> | 秦 | 之 | [未] | 得 | 志 | <也>、 |
謂語(述部)=主謂短語 | |||||||
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主語=述賓短語 | 謂語=主謂短語 | ||||||
<連詞> | [状語] | 述賓短語 | <連詞> | 主語 | 謂語=述賓短語 | ||
謂詞 | 賓語 | 謂語 | 賓語 | ||||
<使> | [復] | 有 | 一孟子、 | <則> | 申韓 | 為 | 空言。 |
2007年7月16日公開。