日本漢文へのいざない

 

第一部 日本文化と漢字・漢文

第五章 読解のための漢文法入門

第3節 主謂短語




(3)之字短語(定中短語)の構成要素としてのネクサス

 之字短語については、定中短語のところで一通り説明しました。この定中短語としての之字短語で、「之」字の前に主謂短語(ネクサス)がくる場合がよくあります。

【実例】

「余至扶風 之 明年」(蘇軾『喜雨亭記』)

 これは、「余(よ)、扶風(ふふう=地名)に至るの明年(みょうねん)」と訓読します。「○○するの××」という言い方は日本語としては変ですが、漢文訓読調として今でも使用されることがあります。

【例句1】

余至扶風之明年、始治舎。(蘇軾『喜雨亭記』)

(訓読)()扶風(ふふう)(いた)るの明年(みようねん)(はじ)めて(しや)(おさ)む。

(現代語訳)私が扶風(ふふう=地名)に来た翌年に、はじめて官舎の修理をした。

主語(主部)=定中短語(之字短語)謂語(述部)=状中短語
定語中心詞[状語]述賓短語
主謂短語之字主詞謂詞賓語
主語謂詞賓語
扶風明年、[始]舎。

 次は、主謂短語を構成要素とする之字短語(定中短語)が謂語に含まれている例句です。

【例句2】

天下畏皐陶執法之堅。(蘇軾『刑賞忠厚之至論』)

(訓読)天下(てんか)皐陶(こうよう)(ほう)()るの(かた)きを(おそ)る。

(現代語訳)天下の人人は、皐陶(こうよう=人名)が法律の執行を厳正にすることに恐れをなした。

主語(主部)謂語(述部)=述賓短語
謂詞賓語=定中短語(之字短語)
定語中心詞
主謂短語之字
主語謂詞賓語
天下皐陶堅。



2007年7月16日公開。

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