日本漢文へのいざない

 

第一部 日本文化と漢字・漢文

第五章 読解のための漢文法入門

第2節 詞と短語




(10)述賓短語2 形容詞の意動賓語

 漢文では、形容詞は動詞の一部です(李佐豊氏は形容詞を「状態動詞」に含めています。同氏著『古代漢語語法学』、中国:商務印書館、131ページ)。動詞の一種だから、形容詞も賓語を取ることがあります。賓語を取るからといって、「形容詞が動詞に品詞転換している」などと考える必要はありません。

【例句1】

<意動賓語>

時人両賢之。(蘇軾『司馬温公行状』)

(訓読)時人(じじん)(とも)(これ)(けん)とす。

(現代語訳)同時代の人人は、龐籍(ほう・せき=人名)と司馬温公は二人とも賢人であると評した。

主語(主部)謂語(述部)=述賓短語
主語謂詞=状中短語賓語
時人[両]  賢之。

 この句では、述賓短語の中に状中短語があるので、複雑そうにみえますが、それほど大したことはありません。

 形容詞が賓語を取る場合、訓読では「○○とす」のように読みます。これは「○○だと思った」「○○だと評した」というような意味です。このような賓語は「意動賓語」と呼ばれています。

 もう一つ意動賓語の例を挙げておきます。

【例句2】

<意動賓語>

爾安敢軽吾射。(欧陽脩『帰田録』)

(訓読)(なんじ)(いずく)んぞ()えて()(しや)(かろ)んずるや。

(現代語訳)お前はどうして私の弓の腕前をけなしたりするのか。

主語(主部)謂語(述部)=述賓短語
主語謂詞=状中短語賓語
[安]  [敢]  軽吾射。

 上の例は、「軽い」という形容詞を「軽んずる」と動詞的に訓読しています。「遠」「近」などの形容詞も動詞的に「遠しとす」「近しとす」と訓読することがあります。「不遠千里」は「千里を遠しとせず」です。



2007年7月16日公開。

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