日本漢文へのいざない

 

第一部 日本文化と漢字・漢文

第五章 読解のための漢文法入門

第2節 詞と短語




(6)定中短語

 定中短語とは、中心詞(首品)たる名詞が従属詞(修品)により修飾される形式の短語です。連体修飾語を「定語」というので、「定語+中心語」を略して「定中短語」と呼ばれます。

【例句】

太初眉山市井人也。(蘇軾『志林』)

(訓読)太初(たいしよ)眉山(びざん)市井(しせい)(ひと)(なり)

(現代語訳)陳太初(ちん・たいしょ=人名)は眉山(地名)の民間人であった。

「眉山市井人」は定中短語です。この短語に含まれる詞の修飾関係は、次のようになっています。

修品(三品)修品(次品)首品(中心詞)
(tertiary)(secondary)(primary)
[定語1][定語2]名詞
名詞  →名詞  →名詞
眉山市井

 上の修飾関係を階層的に示すと下表のようになります。

定中短語
修品(次品)定中短語(中心詞)
修品(三品)名修品(次品)首品(中心詞)
眉山市井

※本当は、生成文法で用いるようなツリー構造で表すと分かりやすいのですが、HTLMでツリー構造を書いてもブラウザで見ると形が崩れ、かえって分かりにくくなります。そのため、やむなく表にしています。

 上の例句では、定中短語が、句(sentence)の謂語となっています。

主語(主部)謂語(述部)=定中短語
主語[定語] [定語]   謂詞
太初[眉山] [市井]    人   (也)。

(第1句式)

 定中短語はしばしば結構助詞「之」(シ zhī)を用いる「之字短語」となります。

 「山之麓」(山の→麓)

 「安寧之術」(安寧の→術)

 「諸侯之禍」(諸侯の→禍=わざわい)

 これは、結構助詞「之」によって、二つの詞を結合させる形式です。「之」字は、日本語の「の」に当たることばです。「○○之」は、一つのかたまりとして、中心語を修飾する「定語」(連体修飾語)となるのです。



2007年7月16日公開。

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