定中短語とは、中心詞(首品)たる名詞が従属詞(修品)により修飾される形式の短語です。連体修飾語を「定語」というので、「定語+中心語」を略して「定中短語」と呼ばれます。
【例句】
太初眉山市井人也。(蘇軾『志林』)
(訓読)太初は眉山の市井の人也。
(現代語訳)陳太初(ちん・たいしょ=人名)は眉山(地名)の民間人であった。
「眉山市井人」は定中短語です。この短語に含まれる詞の修飾関係は、次のようになっています。
修品(三品) | 修品(次品) | 首品(中心詞) |
---|---|---|
(tertiary) | (secondary) | (primary) |
[定語1] | [定語2] | 名詞 |
名詞 → | 名詞 → | 名詞 |
眉山 | 市井 | 人 |
上の修飾関係を階層的に示すと下表のようになります。
定中短語 | ||
---|---|---|
修品(次品) | 定中短語(中心詞) | |
修品(三品) | 名修品(次品) | 首品(中心詞) |
眉山 | 市井 | 人 |
※本当は、生成文法で用いるようなツリー構造で表すと分かりやすいのですが、HTLMでツリー構造を書いてもブラウザで見ると形が崩れ、かえって分かりにくくなります。そのため、やむなく表にしています。
上の例句では、定中短語が、句(sentence)の謂語となっています。
主語(主部) | 謂語(述部)=定中短語 |
---|---|
主語 | [定語] [定語] 謂詞 |
太初 | [眉山] [市井] 人 (也)。 |
(第1句式)
定中短語はしばしば結構助詞「之」(シ zhī)を用いる「之字短語」となります。
「山之麓」(山の→麓)
「安寧之術」(安寧の→術)
「諸侯之禍」(諸侯の→禍=わざわい)
これは、結構助詞「之」によって、二つの詞を結合させる形式です。「之」字は、日本語の「の」に当たることばです。「○○之」は、一つのかたまりとして、中心語を修飾する「定語」(連体修飾語)となるのです。
2007年7月16日公開。