日本漢文へのいざない

 

第一部 日本文化と漢字・漢文

第五章 読解のための漢文法入門

第2節 詞と短語




(7)状中短語1

 状中短語とは、中心語(首品)たる動詞、形容詞が、状語(連用修飾語=修品)により修飾されている形式の短語です。

 まず非常に簡単な形式(二字の結びつき)から見てみます。

「甚美」(はなはだ→美しい)

「美甚」(美しい←はなはだ)

 この二つの短語は全く同じ意味です。構成している詞も全く同じです。状語である副詞「甚」(はなはだ=非常に)は、中心語(形容詞)の「美」の前に置かれたり、後ろに置かれたりします。

 副詞が状語になる場合は、二字だけの単純な構造でも複合詞(慣用語)ではなく短語として扱うのは、副詞は中心語との結びつきが複合詞とみなしうるほどには強くないからです。※

※副詞は一般に虚詞であるとされているのは、副詞が単独では主語や謂語(謂詞)になれないからですが、副詞は他の虚詞と違い状語になることができます。他の虚詞は状語になることさえできません。副詞が半実半虚といわれるゆえんです。

【例句1】

花甚美。

(訓読)花甚だ美なり。

(現代語訳)花はとてもきれいだ。

主語(主部)謂語(述部)=状中短語
主語[状語]  謂詞
[甚]   美

【例句2】

花美甚。

(訓読)(はな)()なること(はなは)だし。

(現代語訳)花はとてもきれいだ。

主語(主部)謂語(述部)=状中短語
主語謂詞  [状語]
美   [甚]

 状語が謂詞の後に置かれる場合は、かつては「状語」ではなく「補語」と呼ばれることが多かったのですが、謂詞を修飾していることは同じなので、「状語」「補語」と用語を使い分ける合理性はありません。どちらも「状語」と呼んだほうがよいと思います。(馬忠著『古代漢語語法』中国:山東教育出版社、135ページを参照。)



2007年7月16日公開。

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