日本漢文へのいざない

 

第一部 日本文化と漢字・漢文

第五章 読解のための漢文法入門

第一節 漢文法へのいざない




(5)無主句について1

 実際に漢文を読んでみると、主語のない句(sentence)のほうが主語のある句よりも多いことに気づかれると思います。

 だとすると、漢文の句は「主語」と「謂語」から成るという説明は不十分だということになります。実は、基本3句式には、それぞれ主語のない形式が存在するのです。主語のない形式を「無主句」と呼びます。

 「無主句」は、「主語」がないので、「謂語」のみの句です。しかし、主語が省略されているわけではなく、主語はもともと無いのです。

【例句1】

嗚呼!哀哉!

(訓読)嗚呼(ああ)(かな)しい(かな)


謂語
嗚呼!

謂語
哀哉!

 現代語訳は必要ないと思います。詠嘆の言葉には主語がありません。これは容易に理解していただけると思います。かつて、このような詠嘆の語も句(sentence)と見てよいのかという言語学上の議論があったようですが、今ではこれらも句であるとされています。

【例句2】

然!

(訓読)(しか)り!

謂語
然!

「否!(いな)」も同様。

謂語
否!

 このような応答の形式が無主句になるのは、多くの言語に共通することです。



2007年7月16日公開。

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