ここでは、漢文の3つの基本句式について説明します。
3つの句式を分けるのは、その句の謂語に含まれる目的語(object)があるかないか、あるとしたら1つか2つかということで判断します。※
※これは、何の目的語かというと、謂語の中心詞である「謂詞」の目的語です。謂詞は名詞である場合は当然のことながら目的語を取りませんが、謂詞が動詞・形容詞の場合は目的語を取ることがあります。
「目的語」(object)のことを漢文法では「賓語」(ひんご bīnyŭ)と呼びます。句式の分け方は、簡単にいうと、次のとおりです。
第1句式・・・謂語(述部)に賓語(目的語=object)を含まない句式
第2句式・・・謂語に賓語が一つ含まれる句式
第3句式・・・謂語に賓語が二つ含まれる句式
理解しやすくするために、図解してみます。
第1句式 (謂語に賓語を含まない)
主語(主部) | 謂語(述部) |
---|---|
主語 | 謂詞 |
第2句式(謂語に含まれる賓語は1つ)
主語(主部) | 謂語(述部) | |
---|---|---|
主語 | 謂詞 | 賓語 |
第3句式(謂語に含まれる賓語は2つ)
主語(主部) | 謂語(述部) | ||
---|---|---|---|
主語 | 謂詞 | 賓語 | 賓語 |
句式は謂語に含まれる賓語の数で決まり、修飾語は全く関係しません。
修飾語には、名詞などの体言を修飾する語(連体修飾語)である「定語」と、動詞、形容詞などの用言を修飾する語(連用修飾語)である「状語」の二種類があります。修飾語は、主語や謂語の成分(謂詞・賓語)を修飾します。※
※謂詞を修飾する「状語」は謂詞の前に置かれる場合と、後ろに置かれる場合がありますが、謂詞の後ろに置かれる場合には「補語」という名称で呼ぶ人もあります。(「補語」を句式の分類に使う人もありますが、これは修飾語に過ぎないので、私は反対です。)
では、次に実例を見ていただきましょう。
(a)第1句式
まず、第1句式(賓語がない句式)の例句を見ていただきます。
【例句1】
義帝天下之賢主。(蘇軾『范増論』)
(訓読)義帝は、天下の賢主なり。
(現代語訳)義帝は、天下第一の賢明な君主であった。
主語(主部) | 謂語(述部) |
---|---|
主語 | 謂詞 |
義帝 | [天下之]賢主。 |
上の句は、謂語の中心となる語である「謂詞」が名詞になっている例です。「天下之」を[ ]で囲ったのは、「賢主」を修飾する語であることを表すためです。
(b)第2句式
第2句式は、謂語に賓語が一つだけ含まれるものです。
【例句2】
軾七八歳時始知読書。(蘇軾『上梅直講書』)
(訓読)軾、七八歳の時、始めて読書を知る。※
※「読書を知る」は「書を読むを知る」、「書を読むことを知る」と訓読してもよい。
(現代語訳)私は七歳か八歳のころに、はじめて本を読んで勉強を始めた。
主語(主部) | 謂語(述部) | |
---|---|---|
主語 | 謂詞 | 賓語 |
軾 | [七八歳時] [始] 知 | 読書。 |
(c)第3句式
謂語が、二つの賓語を含む句式です。
【例句】
或問之年。(蘇軾『志林』)
(訓読)或、之に年を問う。
(現代語訳)ある人が、彼ら(三人の老人)に年齢を聞いた。
主語(主部) | 謂語(述部) | ||
---|---|---|---|
主語 | 謂詞 | 賓語 | 賓語 |
或 | 問 | 之 | 年。 |
漢文の基本句式は以上の三つです。
これらを見ると、漢文の句式(構文)は、「英語と似ている」と思われた方も多いと思います。英語と似ているので、英文の読解法をある程度参考にすることができるのです。
上の句式の図式において、謂語の部分には、修飾をあらわす[ ]の記号を付けています。修飾語には、「定語」(連体修飾語)と「状語」(連用修飾語)があります。これらについては後述します。
2007年7月16日公開。