ここからは、少しだけ専門用語が出てきます。しかし、あまり難しく考える必要はありません。だいたいの意味が分かればよいと考えてください。
ここで使用している専門用語は、現代中国の文法家が使用しているものをそのまま使っているので、すこし違和感があるかもしれません。しかし、知っておけば、のちのち役に立つはずです。
漢文法では文(sentence)のことを「句」(く jù)または「句子」(jùzi)と呼びます。そして、構文(sentence-structure)のことを「句式」(くしき jùshì)と呼んでいます。
漢文を読解するには、この「句式」を理解することがなによりも大切です。
江戸時代の人人は、素読を繰り返す中に、自然と漢文の句式を理解していました。しかし、現代の私たちは、大量の漢文を読むことができないので、意識的に句式を覚えなければなりません。
漢文では、一つの句(sentence)は主部(subject)と述部(predicate)から成り立つのが原則です。
主部(subject) | 述部(predicate) |
---|---|
天地 | 長久 |
「主部」のことは漢文法では「主語」(しゅご zhŭyŭ)、「述部」のことは「謂語」(いご wèiyŭ)と呼びます。
「謂語」の中心となる詞を「謂詞」と呼びます。謂詞は動詞、形容詞のほか名詞であることもあります。上の例句をもういちど見てみましょう。
【例句1】
天地長久。
(訓読)
(現代語訳)天地は永遠である。
この句では、主語「天地」は名詞、謂語「長久」は形容詞です。この句は、修辞上、次のように分解されることがあります。(一般に「互文」といっているもの)。
【例句2】
天長。地久。(『老子』第7章)
(訓読)
(現代語訳)天も地も永遠である。
(1) | 天 | 地 | 長 | 久。 |
│ | ╲ | ╱ | │ | |
│ | ╳ | │ | ||
│ | ╱ | ╲ | │ | |
(2) | 天 | 長。 | 地 | 久。 |
(1)と(2)とは同じ意味で、(2)の場合でも訓読は一つの句のように読みますが、文法的に見るならば、(2)は独立した二つの句なのです。つまり、句(sentence)は、意味のつながりではなく、主部(主語)と述部(謂語)が存在しているか否かで決定されるのです。
主語(主部) | 謂語(述部) |
---|---|
天 | 長 |
主語(主部) | 謂語(述部) |
---|---|
地 | 久 |
2007年7月16日公開。
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