日本漢文へのいざない

 

第一部 日本文化と漢字・漢文

第三章 日本漢字音と字音かなづかい




(5)慣用音(かんようおん)

 漢音・吳音・唐音の三音のほかに、慣用音と呼ばれる音があります。これは、もともと誤った音だったのが、皆が使ううちに正しい音と認められるようになったものです。例としては、「憧憬」の「憧」を「ドウ」と読むことなどがあります。これは本来「ショウケイ」と読むべきものですが、最近は「ドウケイ」と読まれることが多くなり、ふりがなも「ドウケイ」と振られることが多くなっています。

 慣用音は、もともとは間違いだったのですが、だからといって「正しい」音にこだわりすぎると、かえって変なことになる場合もあります。たとえば、「輸入」の「輸」は正しい漢音では「シュ」ですから、「輸入」は「シュニュウ」と読むのが正しい。しかし、「シュニュウ」と読んだのでは通じません。これは慣用音に従って「ユニュウ」と読むべきです。

 また、「射殺」という語は、普通「シャサツ」と読んでいます。しかし、ペダンティックに「正しい漢音」で読むと「セキサツ」となります。「へえ!」と思われたかたは、ぜひ漢和辞典を開いて確かめてください。しかし、「セキサツ」などと読んでは、ほとんどの人が変だと感じるでしょう。

 ですから、「ドウケイ」のような、年配の人が「間違い」と指摘するものは除外するにしても、「ユニュウ」、「シャサツ」のような歴史ある間違いは、慣用音として認めるべきなのです。



2004年11月3日公開。

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