日本漢文の世界

 

英傑の遺墨が語る日本の近代



山路弥吉(愛山) 語録
やまじ・やきち(あいざん)


1864-1917。史論家。『国民之友』誌上等で活躍。

山路愛山 語録 日本漢文の世界 kambun.jp

[解読]

蓋愛其身者、能以一生為万載之業。或一日而遺数百年之体。不知自愛者、以其聡明際盛時、操名器、徒就一己之私而已。
 録蔡清之語  路愛山生書

[訓読]

(けだ)し、()()(あい)する(もの)は、()一生(いっしょう)(もっ)万載(ばんさい)(ぎょう)()す。(あるい)一日(いちじつ)にして数百年(すうひゃくねん)(たい)(のこ)す。(みずか)(あい)することを()らざる(もの)は、()聡明(そうめい)(もっ)盛時(せいじ)(さい)し、名器(めいき)(そう)するも、(いたず)らに一己(いっこ)(わたくし)(しゅう)する而已(のみ)
 蔡清(さいせい)()(ろく)す  ()愛山(あいざん)(せい)(しょ)

[語釈]

万載(ばんさい)(ぎょう)
 一万年かかる大事業。

数百年(すうひゃくねん)(たい)
 数百年かかって築く体制。

盛時(せいじ)
 国家の最盛期。

名器(めいき)
 「名」は爵号、「器」は車や衣服のことで、身分秩序のこと。

一己(いっこ)
 一個人。

(わたくし)
 自分ひとりの利益。

()愛山(あいざん)(せい)
 「山路」を「路」としたのは、いわゆる「修姓」で、中国風に姓を一文字で表現するもの。

[訳]

自分自身を愛する人は、一生の間に万年かかるような仕事を成し遂げることができる。またその人は、一日で、数百年かかるような体制を築くこともできる。
自分自身を愛することができない人は、聡明であり、国の最盛期に身分秩序を正す重職に就いたとしても、結局は自分一個人の利益ばかりを追求してしまうものだ。
  蔡清の語を引用。 山路愛山

[出典]

蔡清(明の儒者。1453-1508)の著書からの引用らしいが、詳細は不明。

2009年12月6日公開。2009年12月8日修正。

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